読書バリアフリー法では、読書環境の整備は国や自治体の責務としている。植村教授は「出版社のなかには規模の小さい企業も多く、電子書籍化やデータ提供に人員を割くのが現実的に難しい。データ提供のためのプラットフォームづくりなどの環境整備は、国が費用を負担し、その責任で進めるべきではないか」と指摘。「障害者も一人の読者として普通に本を選び、買い、読むことができる市場が望ましい」と話している。
米国では義務付け
読書のバリアフリーをめぐり、海外ではどんな取り組みがされているのだろうか。同志社大の客員教授、関根千佳さんは「欧米では、情報へのアクセスは人権のひとつという意識が強い。妨げとなっている環境があるならそれを解消するように取り組んでいる」と指摘する。
たとえば米国には、政府が新たに調達する電子機器、情報端末などに厳格な障害者対応を義務付ける「リハビリテーション法508条」がある。
英語圏で展開されているのが、米国のNPOによる「ブックシェア」だ。障害のある子供や親などからの依頼を受けると、無料で書籍をデータにして届けるサービスを行っている。データを他の人が利用できないよう、不正防止の機能も備えられているという。
【読書バリアフリー法】
障害の有無にかかわらず、誰もが本を読める環境を整えるのが目的。政府が平成30年に、障害者の読書環境整備を求めた「マラケシュ条約」を採択したのを背景に昨年6月、議員立法により成立した。国に基本計画と財政措置を義務付け、自治体は計画作成の努力義務とした。国の基本計画案では、音声読み上げ式書籍やオーディオブックの普及、図書館での障害者サービスの充実などが盛り込まれた。早ければ6月下旬にも策定される。