IT風土記

香川発 2市1町の広域連携で防災に強いまちづくりに挑む (1/2ページ)

 IoT(モノのインターネット)を活用してインフラを効率的に管理・運用し、住民の生活の質を高めるスマートシティ政策に取り組む自治体の動きが盛り上がってきた。香川県高松市もその1つ。幅広いデータを利活用して、市が抱える課題の解決につなげることを目的にしており、手始めに、氾濫の危険性が高い河川などの水位をセンサーやカメラで監視するシステムを整備した。

 「2004年に台風16号が来た時、高潮の状況の調査のため2人1組で高松港に向いました。ライフジャケットを着て、岸壁で30分置きに潮位の状況を報告していたのですが、すごい風が吹く中で、横殴りの雨を受けながら大きなものさしで潮位を測ったことを覚えています」。高松市都市整備局道路管理課の高橋淳課長補佐は、2004年の台風のことをこう振り返る。

 高松市がスマートシティ政策の一環として、河川の水位などの情報をリアルタイムで入手し、被害状況を早期に把握して、住民への早期の避難誘導など安全・安心なまちづくりに役立てることにしたのは、台風による高潮の影響で、中心市街地が広範囲にわたって水没する大きな被害を受けた苦い経験があるからだ。今から16年前の2004年8月30日、台風16号が九州、四国地方を通過し、不運なことに瀬戸内地域は年間で最も潮位の高くなる大潮の満潮時刻と重なった。台風による気圧の低下によって海水が押し上げられ、さらに強風が吹き寄せて潮位が上昇。高松港では、通常よりも1メートル以上も高い 2.46メートルの潮位を記録した。

 高松市では、その日、午後9時過ぎから沿岸部の道路が冠水。河川沿いに海水が逆流し、海水が約2キロ離れた地域にまで達した。高松市の中央商店街は、まるで川のような状態になったという。高松市内では980ヘクタールが水に浸かり、約1万5000戸が床上・床下浸水の被害を受け、2人が犠牲になった。国の出先機関や大手企業の支店が集まる四国の政治経済の中心地の都市機能が完全にマヒし、高松市にとっては、戦後最大の台風被害だった。

 スピーディーに情報を収集・分析

 2019年度に市は、瀬戸内海の沿岸部5カ所に潮位を計測するセンサーを、市が管理する小規模河川8カ所に水位を計測するセンサーを設置した。さらに、豪雨などで冠水しやすいアンダーパス18カ所にも道路の冠水を感知するセンサーを設置した。

 「センサーを設置したのは、災害が発生する可能性が高いところです。市が管理する河川は用水路のような小さな河川が多いのですが、降雨が集中すると増水を起こしやすい。監視カメラも設置して遠隔でも情報が把握できるようになっています」と語るのは、市都市整備局河港課の國方利美課長補佐。冠水しやすい道路のアンダーパスにもセンサーを設置したのは、2004年の台風で、浸水したアンダーパスに侵入し、自動車に乗っていた男性が死亡する事故が発生したことが背景にあると、道路管理課の高橋課長補佐は説明してくれた。

 県が管理する河川の潮位や水位においても、これまでは市の職員等がパトロールなどで監視していたが、市が独自にセンサーを設置したことでよりきめ細かいエリアの河川情報をリアルタイムで入手できるようになった。加えて、これまでは手作業で集めていた雨量などの気象情報や、河川の水位などのデータを共通プラットフォーム上に自動収集するようにしたことで、一元的に管理できるようになり、地図上にセンサー設置個所の潮位や水位の状況を表示し、可視化を実現した。

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