先週の金融市場は米国をはじめとする先進国で新型コロナウイルスの感染再拡大が進むなどネガティブな材料もありましたが、底堅い米国経済指標、ワクチン開発への期待、主要中央銀行の強力な金融緩和の影響などもあり、安定的な状態を維持しています。
今週も引き続き、新型コロナウイルスの感染被害状況、経済活動に影響を及ぼすような規制の再実施の有無のほか、ワクチン開発などポジティブな材料が出てくるかどうかに注目し、相場の反応を探っていきたいところです。
また、香港では国家安全維持法が施行されたことを受けて緊張が高まり、米中関係悪化が懸念されており、制裁合戦となると、短期的に市場の不安が強まる可能性が考えられそうです。
このほか、欧州では欧州連合(EU)の復興基金の承認に向けた動きに進展があるかに注目が集まります。合意に向けて明るい材料が出てくればユーロにとっては買い材料、否定的な材料が出てくると、ユーロの上値圧迫材料となりそうです。
ドル円は先週の価格レンジに注目
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は、好調な米国経済指標の影響もあり、底堅い場面もありましたが、上値も重く、1米ドル=107.35-108.10円付近の価格レンジを中心とした方向感の鈍い推移が続きました。
OANDAのオープンポジションを見ると、先週の価格レンジである1米ドル=107.35-108.10円付近で構築されたポジションが多く、このレンジをしっかりと上下に抜ける動きとなると、売買のいずれかのポジションの損切り(損失拡大を防ぐための決済の取引)が増え、価格に方向感が出てくる可能性が考えられそうです。
また、買いポジションの比率が6割を超えている点に注目すると、下抜けた場合の方が、短期的には損切りの売りが出やすく、影響が大きくなる可能性が考えられそうです。
ユーロドルも均衡がいずれに崩れるか
先週のユーロドルは、1ユーロ=1.12-1.13米ドル付近を中心とした価格レンジで方向感の鈍い推移が続きました。
OANDAのオープンポジションを見ると、1ユーロ=1.12-1.13米ドル付近を中心とした値動きが続いていることもあり、この水準で構築されたポジションが売買共に多く、この価格レンジを上下にしっかりと抜ける動きとなると、いずれかのポジションの損切りが増え、値動きに方向感が出てくる可能性が考えられるため、まずは、このレンジをどちらに抜けるかに注目したいところです。
ポンドドルは含み損を抱えた売りポジが増加
先週のポンドドルは、底堅い推移が続き、一時1ポンド=1.25米ドル台まで上昇する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、上昇により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、これらの損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性が考えられそうです。
一方で直近の伸び悩みで含み損を抱えた買いポジションも少し増えており、下値を探る動きが続くようであれば、これらの損切りの売りによる下押し圧力にも少し注意が必要となりそうです。
〈OANDAのオーダーブック〉
オープンポジションはここに注目
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
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