趣味・レジャー

五輪は「密」なき風景へ 国立競技場は観客1万人が限界か

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、1年後に延期された東京五輪・パラリンピック。会場に観客は入れるのか、膨大な数の大会関係者の感染防止対策、選手村の運営は…。“ウィズコロナ五輪”はどんな風景になるのか。(石原颯、端迫雅俊)

 寂しいスタンド

 陸上男子100メートル決勝。世界新記録をマークした選手に対し、国立競技場のスタンドに数メートルの間隔を空けて座ったマスク姿の観客が、まばらな拍手を送る-。こんな光景が現実味を帯びている。

 観客の感染防止に最も有効なのは無観客開催だが巨額のチケット収入がなくなれば大会運営に与える打撃は計り知れず、アスリートのパフォーマンスにも影響しかねない。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「無観客は明らかに望んでいない」とコメント。大会組織委員会関係者も「今のところ無観客は想定していない」とする。

 ただ、ソーシャルディスタンス(社会的距離)確保の観点からも会場の観客数削減は不可避。そこで参考になるのは国内のプロスポーツだ。無観客試合が続いたプロ野球、サッカーJリーグは現在、5千人を上限に観客を入れた試合運営に移行。8月からは上限を収容人員の50%に引き上げる予定だったが、新規感染者の増加を受けて引き上げの見送りを決めた。

 両者のガイドライン作成に関わった愛知医科大の三鴨広繁教授(感染症学)は「五輪でいえば、国立競技場に7万人近く入れるのは到底無理。現状の感染状況では座席の間隔を空けて、1万人程度が限界ではないか」と話す。マスク着用の義務づけや入場時の検温、行列で「密」を避ける取り組みなども欠かせない。

 プロ野球では大声での声援や観客同士のハイタッチなどを禁止している。五輪でも同様の応援ルール策定が求められる可能性が高いが、三鴨教授は「新しい観戦スタイルを定着させようと思っても、トップアスリートの感動的なパフォーマンスに黙って拍手するだけ、というのは正直難しいだろう」と打ち明ける。

 対面取材は無理

 8万人に及ぶボランティアや清掃、警備などの契約業者、世界中から訪れる2万8千人ものメディア関係者の扱いも頭が痛い問題だ。組織委関係者は「選手と触れ合う人の人数を絞り込む必要がある」として、競技関係者と運営関係者が移動するスペースを分ける「ゾーニング」を行う案も検討されていると明かす。

 Jリーグでは対面取材を避け、監督や選手数名のオンライン取材を導入している。大会関係者は「記者会見では(ビデオ会議アプリ)Zoomを使うなどするしかない。ミックスゾーンで取材するのは危険だ」とするが、五輪では記者の数も取材対象者の数も桁違い。限られた時間で同様の手法がとれるのか、疑問は残る。

 理念脅かされる

 五輪憲章で設置がうたわれる選手村(東京都中央区)には、選手や選手団関係者ら1万人以上が宿泊する見通し。食堂や理髪店のほか娯楽設備なども設けられ、世界中の選手が国境を越えて交流する「五輪精神」を体現する場所だが、コロナ禍ではクラスター(感染者集団)発生の温床になりかねない。

 準備されている選手村の多くは4人部屋などの相部屋。早稲田大の友添秀則教授(スポーツ倫理学)は「個室でなくては滞在しないという声も今後、出てくるだろう。増設も含め、設備そのものを考え直さないといけない」と話す。

 人々の接触をできるだけ断ち、「3密」を避けるのがコロナ対応の基本だが、徹底すればするほど、選手村の理念が脅かされることになる。オンラインツールの活用も含めて、組織委は感染防止に心を砕きつつ、いかに選手同士の交流の機会を確保するかという難題にも直面しそうだ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus