センター試験よりは易しいが…
さて、筆者の担当している「数的処理」は4つの分野で構成される。
【数的処理の4分野】
数的推理:方程式、不等式、速度算、濃度算、整数、確率など
判断推理:論理、集合、暗号、嘘つき問題、順序・位置関係など
空間把握:立体の構成・切断などの図形の観念的な問題など
資料解釈:表やグラフなどの資料の読み取り問題
※「TAC 公務員総合サイト」から引用
この数的処理は、配点割合にすると「教養択一」のうちの4割程度を占めている。「教養択一」の科目別の出題数(配点)の割合を5教科に当てはめてもう少し詳しく見てみると、国家一般職ではだいたい、「算数・数学:4割、現代文・英語:3割、社会:2割、理科:1割」といった線であるが、これが地方上級になると、「算数・数学:3割、現代文・英語:2割、社会:3.5割、理科:1.5割」くらいになったりする。
肝心の難易度であるが、「教養択一」と他の試験との難易度を比べると、SPIよりは難しいが(出題傾向は似ている)、センター試験(共通テスト)よりは易しい(出題傾向は異なる)。
理数系科目が得意な受験者であれば、「教養択一」の「数的処理(算数・数学)」と「自然科学(物理・化学・生物)」がそれなりの得点源になり、文系科目(とくに社会科学系)が得意な受験者であれば、「専門択一」が大きな得点源になる。逆に、理数系科目が苦手な受験者の場合、「教養択一」の「数的処理」と「自然科学」が大きく足を引っ張る懸念は強い。
「数的処理」を小・中・高校の履修内容との対応で捉えると、小5~高1の学習範囲(数Ⅰ・Aまで)+αであり、高校・大学入試に比べると論理・命題に関する問題のウェイトが高い。「自然科学」は物理基礎・化学基礎・生物基礎に相当する(が、出題数が少ないので、捨てても大したビハインドにはならない)。
行政職が数的処理能力を求められるのは今や必然
「公務員、それも行政職なのに、数学(理数系)の比率がけっこう高いな」と感じられたかもしれないが、筆者としては「専門択一」に含まれ、先ほどその他で括った情報工学・情報数学・統計学からの出題割合を、法律系・経済系・政治系のそれぞれと同じくらいまで高めてもよいくらいだと考えている(現状、出題されるのは国税専門官と財務専門官にほぼ限られている)。
行政官に求められる素養はさまざまだろうが、数字に弱い会計士や税理士があり得ないように、行政サービスを受ける側にとっては、論理的判断力や資料解釈力(情報分析力)に乏しい行政官はできるだけ少ないほうがいい。また、当事者にとっても、世の中がBPRからRPAやAIを基盤としたDXへと進んでいくなかで(公務員に限った話ではないが)、広義の数的処理能力の必要性は、高まっていくことはあっても下がることはないだろう。
畢竟、行政職に就くことも考えているのであれば、数学を疎かにしてはいけない。公務員試験に合格するためだけでなく、行政官として仕事をしていく限り、統計やICTの基礎となる数学は一生ものになるはずだ。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら。