to Tokyo 変貌する街

銀座4丁目 時の移ろい刻むシンボル

 黄昏(たそがれ)時の東京・銀座。わずかに暑さがやわらぎ、街並みがシルエットになっていく。

 日本で最も華やかな場所の一つ、銀座4丁目交差点も今夏は様子が異なる。外国人観光客の姿はなく、買い物客も少なめ。街ゆく人々の表情はマスクに隠されどこか明るさに欠けている。

 そんな交差点を見下ろすように、和光の時計塔は静かに時を刻み続けている。

 服部時計店(現セイコーホールディングス)が建てた初代時計塔がお目見えしたのは1894(明治27)年。

 大正の好況で、建て替えが計画されるが関東大震災で中断、1932(昭和7)年に現在のネオ・ルネサンス様式の2代目時計塔が完成した。先の大戦の東京大空襲を免れ、前回の東京五輪では壁面に英語で歓迎のメッセージを掲げて、活気づく東京を引き立てた。

 今は東日本大震災の発生時刻には毎年鐘を鳴らし、コロナ禍では医療従事者に敬意を表すライトアップが行われるなど、時代の移り変わりに寄り添いながら銀座のシンボルとなっている。

 見上げれば時計の針が進むのに合わせるように、塔の上の夕空も色彩を少しずつ変えていく。薄い水色から群青へ、そして濃紺に。日が暮れると、時計塔に明かりが灯(とも)り、優雅なたたずまいが一層際立った。

 毎正時には時を告げる鐘の音が響く。うつむきがちな信号待ちの人たちも、この音色を耳にすると、ふと顔を上げ、背中を押されるように交差点を渡っていく。(写真報道局 松本健吾)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus