ヘルスケア

大阪のコロナ重症者は東京の3倍に 中高年層への感染拡大警戒

 新型コロナウイルスの感染再拡大が続く大阪府で、重症者の増加が目立っている。16日時点で重症者は72人となり、第1波のピークだった65人(4月19~21日)を超えて過去最多に。東京都より1日当たりの新規感染者数は少ないものの、重症者の数が大幅に多い「逆転現象」も生じている。複数の高齢者施設でのクラスター(感染者集団)発生が主な要因とみられるが、府は家庭などでも若年層から中高年層に感染が拡大しつつあるとして警戒を強めている。

 府内では7月22日に初めて感染者が100人を突破。8月17日は71人で14日ぶりに100人を下回ったが、ほぼ連日100人を超える新たな感染者を確認している。一方、重症者数は7月31日時点で19人となり東京の16人を上回った。その後、8月16日時点で72人まで増加し、東京(25人)の約3倍となった。

 1日当たりの新たな感染者数は7月26日以降、東京が平均約300人なのに対し、大阪は平均約170人。府内11カ所の高齢者施設でクラスターが発生しているとはいえ、感染者数に対する重症者数の多さは際立つ。東京より感染者の少ない大阪で重症者が多くなる「逆転現象」はなぜ起きているのか。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、「PCR検査を含め、大阪は医療態勢や医療レベルで東京と遜(そん)色(しょく)はなく、決め手となる理由は見当たらない」とし、年齢や持病、生活習慣などの詳しいデータを分析する必要性を指摘する。

 一方、大阪府医師会の茂松茂人会長は「はっきりとした理由は定かではない」とした上で、「同じ都市部でも、東京は1人暮らしの若者が多く、若者間で感染が広がっている。これに対し、大阪は家族と一緒に暮らす若者も多いことから、家庭内で若者から中高年層に感染が広がっているのかもしれない」と推察する。

 実際、府内では6月中旬以降、若者の感染者が半数以上を占める傾向にあったが、8月16日に新たに確認された感染者147人のうち、20~30代は50人で34%にとどまる一方、40代以上は60%以上を占めた。家庭内での感染もじわじわ増加。7月末の約13%に対し、8月16日時点は約16%と上昇傾向にある。

 府は現在、重症患者用に病床を188床確保。17日時点の重症者は、5人が亡くなったことなどが影響し、16日時点から2人減の70人で、病床使用率は37・2%となった。府は今後、重症者の病床を215床まで増やす計画だ。

 感染者の年代が上がり始めていることについて、吉村洋文知事は「市中感染が広がると高齢者施設、医療機関にも感染が広がる」と危機感をあらわにしている。また、「高齢者にうつすと命を失うと強く発信していかなければいけない」と述べ、近く府の対策本部会議を開き、重症者の傾向を分析、増加抑止に向けた対応を協議する考えを示している。

 府は、感染防止対策として5人以上の飲み会の自粛や、大阪市の繁華街・ミナミの一部飲食店を対象に、6日から20日まで営業時間短縮や休業を要請しており、今後こうした対策の効果の見極めも行っていく方針だ。

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