主に活用されているのはQRコードだ。店舗やイベント会場に掲示された自治体発行のQRコードをスマホで読み取り、メールアドレスや無料通信アプリ「LINE(ライン)」のアカウント情報を登録。同様にQRコードを読み取った人の感染が判明した場合、同日・同時間帯にその施設にいた人に一斉通知される。
ココアが「人」との接触を把握するのに対し、こちらは「場所」を起点に感染の疑いがある人をあぶり出そうという試み。現在、20近い都道府県でこうしたシステムが導入されている。
ただ、会場や店に入るごとにQRコードを読み取らねばならず手間がかかることや、PR不足もあり、多くの自治体では目標とする登録者に達していないとみられる。
6月下旬に施設利用者へ感染者との接触をメールで通知する「いばらきアマビエちゃん」を導入した茨城県では、登録は8月27日時点で2万1191事業所。目標としている2万5000~2万7000事業所に近づいているが、「『密』になりやすい居酒屋などに関していえば、想定の半分程度」(担当者)。県では、対象とする事業所にシステムへの登録を義務づけ、従わない場合は名称を公表するなどの内容を盛り込んだ条例案を9月県議会に提出する予定だ。
利用者を増やすために知恵を絞る自治体もある。「大阪コロナ追跡システム」を運用する大阪府では、登録ごとに「大阪マイル」というポイントがたまり、期間中に10マイルがたまると吉本興業の観劇チケットなどの抽選券になるサービスを開始している。
国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)は「国のアプリも自治体の追跡システムも、合わせて使うことで感染防止に期待が持てるのは事実だが、現状では登録するインセンティブ(動機付け)に乏しい。コロナとの戦いはまだまだ続くので、国や自治体が事業者と対話しつつシステムをより効果的なものに構築していくとともに、登録者を増やす努力が必要だ」と話している。