朝晴れエッセー

笑顔・9月6日

 夫と朝の散歩を楽しんでいる。時間や天候や体調により、初級、中級、上級とコースは決まる。

 中級コースを歩いているときの出来事である。収穫した夏野菜のカゴをかかえた婦人とすれ違った。見知らぬ人にも「おはようございます」の挨拶(あいさつ)は心掛けている。

 そのときは挨拶に笑顔が添えられていた。気持ちの良いものだ。すれ違った直後に呼び止められた。

 「ナスを持っていかれませんか。両手に持てば2人で4つは持てますよ」。ふいではあったが、朝採れの新鮮なナス。「頂きます」と返していた。

 大きな丸ナスを1つずつ両手に持ち散歩は続く。「ナスどろぼうと思われないかなあ」と冗談を言う夫。カゴの中には、トマト、きゅうり、ゴーヤもあったけれど、とっさに彼女は重たくなく持ちやすいナスを選んでくれたのだ。その気遣いに、優しさに嬉しくなった。何より笑顔が印象的だった。

 笑顔に出合って怒る人はいない。以前に混雑するスーパーでカートを押していた。カートがすれ違いざまに右に左によけながら、お互いに2、3度くり返した。

 私はいらいらしていた。そのとき相手の方がにこっと笑顔で「よく気が合いますね」。すごい、やられたと自分が恥ずかしくなった。

 今日は良いことありそうな嬉しい一日の始まりだった。茄子紺(なすこん)が朝日に光っていた。

森史子(73) 奈良県宇陀市

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