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「百舌鳥・古市古墳群」世界遺産効果はいつまで? 今こそブランド力を磨くとき

 大阪府の堺、羽曳野、藤井寺の3市にまたがる「百舌鳥(もず)・古市古墳群」が世界遺産に登録されてから1年が過ぎた。昨年は堺市堺区の仁徳天皇陵古墳(大山古墳)を中心に観光客が急増。同市は世界遺産を活用した観光施策を打ち出している。ところが今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、観光の目玉と位置付けた気球による遊覧事業の開催のめども立たない。ただ、関西国際空港や大阪の都市部にも近い世界遺産として、魅力的な観光地に変わりはない。専門家は「今こそブランド力を磨くとき」と指摘する。(小川恵理子)

 観光客激減

 「去年は遠方や海外からのお客さんも多かったけど最近はめっきり。ひっきりなしに来ていた大型バスの観光客もいないし、ちょっと寂しいね」。

 そう話すのは、世界遺産を構成する仁徳天皇陵古墳の拝所前で観光ガイドを行うNPO法人「堺観光ボランティア協会」(同区)のボランティアガイド、寺口務さん(73)だ。登録に沸いた昨年とはうって変わり、観光客の姿がない拝所前は閑散としている。

 堺市などによると、世界遺産に登録された昨年7月に仁徳陵を土日祝日に訪れた観光客は約1万1千人。また、近くの堺市博物館では昨年度の来館者数が前年度比約10万人増の26万7千人にのぼった。同市では世界遺産効果とみている。

 しかし、今年入って事態は急変。ボランティア協会も新型コロナの影響で、3月に案内活動を中止。6月から再開したが、今夏はバスツアー客向けの事前予約制のガイドもほとんどがキャンセルの状態となった。協会の福井洋子理事は「気持ちを前向きに、できることを続けたい」と話す。

 気球遊覧も延期

 世界遺産登録1年となる7月、南海難波駅(大阪市中央区)で開かれた記念イベントには、同市の永藤英機市長をはじめ市のPRキャラクター「ハニワ部長」らが登場した。うちわやポストカードを配って登録1年をアピールしたが、横に控える市観光推進課の担当者は焦る気持ちを隠さなかった。「世界遺産効果が続くのは登録から2~3年ともいわれる。誘客に向けて、これからというときに水を差された」

 市の外郭団体による昨年までの試算によると、堺などの地元自治体を訪れる観光客数は平成27年度の1・8倍の約2千万人となると推計されていた。しかし、今年はその数に遠く及ばない。

 さらに、市が観光の目玉として計画していた古墳上空を気球で遊覧する事業も頓挫している。今年8月から実証実験を行う予定だったが、コロナの影響で、住民に対する事前説明会を進められていないからだ。

 住宅街の上空を飛ぶため、安全性やプライバシー保護に関する説明はおろそかにできない。市は個別訪問で説明し続けており、担当者は「訪れた人に上空から古墳を見ることでその価値を知ってもらいたい。実施に向けて必要な準備を進めていく」と話す。

 コロナ後を見据えて

 堺市は今月4日、古墳群観光の玄関口となる「百舌鳥古墳群ビジターセンター」の改修工事を着工した。仁徳陵は天皇や皇族の墓として宮内庁が管理する陵墓で近づくことが難しく、古墳としての特徴や価値が分かりにくいといった声が以前から多い。パネル展示のほか、仁徳陵を上空から見たような体験ができるプロジェクションマッピングの設置などを計画する。

 担当者はコロナ収束後も「インバウンド(訪日外国人観光客)がすぐに戻ってくるとは楽観視していない」と話す。ただ、「実際に来てもらえる状況になってから整備を進めて発信するのでは遅い」とコロナ後を見据え、整備を進める。

 「昨年は京都などで観光地が耐えられる以上の観光客が訪れるオーバーツーリズムが生じ、問題となっていた。堺はそういった観光客を受け入れる格好の場所だと期待されていた」と話すのはシンクタンクのアジア太平洋研究所の稲田義久・数量経済分析センター長だ。百舌鳥・古市古墳群は関空や大阪市にアクセスの良い世界遺産。関西の観光拠点の一つとして高い可能性を秘めているという。

 「ただし、インバウンドを引き込むにも、古墳の魅力や価値をしっかり説明する必要がある」と指摘。「コロナ禍が収束するまでの間を、そういったおもてなしの仕組みや、観光ブランドを育てるための期間にあてるべきだ」と話す。

 世界遺産登録前から、古墳群をPRし続けてきたハニワ部長は「コロナ禍で現場に出向いてのPRは難しい。だが、逆に言えばPRの時間が取れたということ」と余裕を見せる。「外に出ることが難しい時期にも魅力を発信し続けて、落ち着いたときに堺を訪れてほしい」。いつもの飄々とした語り口で展望を語った。

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