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コロナ禍で苦境の地方映画館 「町のスクリーンを守る」奮闘を追う (1/2ページ)

波溝康三

 観客に見てもらい、ようやく映画は完成するー。映画界に伝わる名言だが、近年、地方の映画館経営は危機的状況にある。シネコンやネット配信の普及などに加え、新型コロナウイルスの影響で来館者の足は遠のくばかりだ。そんな逆境下、「採算を度外視し、踏ん張って経営する映画館が全国には少なくない。その姿を伝えたい」と約10年にわたり小規模映画館の活動を追い続けている女性ドキュメンタリー監督がいる。編集技術者から映像作家となった森田惠子監督。登場するのは、クリーニング店や農家などを営みながら老舗映画館を営む館主たち。その生き方はアフターコロナでの映画館経営への向き合い方として、1つのヒントを提示してくれる。

 「観客がたとえ1人でも上映しますよ。映画館の灯りがともっていることが、町のために必要だと思うから」

 こう語るのは、北海道浦河町にある映画館「大黒座」の館主、三上雅弘さん。1918(大正7)年に創業した老舗映画館を受け継ぐ4代目館主だ。

 三上さんはクリーニング店を営みながら、映写技師として1日数回の上映を長年ここで続けてきた。

 100年以上続く地元映画館の火を消したくない-という思いは地元民も同じ。過疎化が止まらない人口1万2000人の小さな町の映画館を支えようと、地元の映画好きの人たちが「大黒座サポーターズ」を結成し、常連客として同館に通う他、年に1回、町の住民でにぎわう「大黒座祭り」を開催するなど、子供から大人までが集う。同館は町のコミュニティーの拠点としての役割も担っているのだ。

 現在、全国を巡回しながら上映中のドキュメンタリー映画「まわる映写機 めぐる人生」では、大黒座など全国の小規模映画館が登場する。

 日本各地にある“小さな映画館”の活動を追い続けて約10年。森田惠子監督にとって、今回の新作は、「小さな町の小さな映画館」(2011年)、「旅する映写機」(13年)に次ぐ、3部作の完結編でもある。

 経営難は兼業で乗り切れ

 高知県安田町にある映画館「大心劇場」の館主、小松秀吉さんの1日は忙しい。

 小松さんは2代目。父が同町内で1954年に創業した中山劇場を引き継ぐ形で、近くに移転し、82年に創業した。映写技師としての技術は父から受け継ぐ“流し込み技法”と呼ばれる伝統の技だ。

 農業で映画館経営を支える他、映画館に隣接する喫茶店も経営。壁に掲げられた大きな看板も手製だ。また、地元ではシンガー・ソングライターとしても知られる。映画の上映前には、大心劇場のオリジナルのテーマ曲を、ギターで弾き語りで披露し、観客を楽しませる。本業の映画館主としては、上映前に受付でチケットを販売し、もぎりを行い、上映中は映写技師…と1人何役もこなしている。

 同町の人口は現在約2400人。高齢化や過疎化は深刻だが、新作映画を毎回楽しみに、遠方から劇場へやって来る常連の固定客は増え、小松さんのファンは多い。

 それでも観客が来ず、上映がないときは、小松さんは映画館の近くの畑に出て農業に従事し、また、川へ魚やうなぎなどを獲りに行く。まさに“半農半映画館”を実践する農家兼業の映画館主だ。

 「小松さんは、地元の映画好きの常連客には、『チケットは一度買ったら、同じ作品を何度見に来ても構わないよ』と言うなど、採算をまったく考えていない。さまざまなアイデアを凝らし、大好きな映画館を存続させようと努力しているんです」と森田監督は話す。

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