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「来てくれないと、つぶれるよ」崖っぷち遊園地が奇想天外“アトラクション” 

 新型コロナウイルスの影響で崖っぷちに立たされている新潟県阿賀野市の遊園地「サントピアワールド」が、奇想天外なアトラクション企画を打ち出し、話題になっている。告知ポスターには「来てくれないと、つぶれるよ」という衝撃的なキャッチコピーが躍る。現地を見にいくと悲壮感はみじんもなく、思わず笑ってしまうような企画だった。(本田賢一)

 ぎりぎりの企画

 企画は11月29日までの毎週末行われており、第1弾のアトラクションは「爆速メリーゴーランド」。今月3日に登場した。「メルヘンは、もうやめだ」と銘打ったこの企画、1台の馬の前に直径1メートルほどの大型扇風機を設置し、強い風を受けながら爆速体験ができるというものだ。

 実物を見た瞬間、目が点になったが、これが女性や子どもたちに人気だった。

 月1回は来園しているという同県新発田市の女子大学生(21)は「何回も乗っているけど新鮮だった。新型コロナを乗り越えようと頑張っているのが伝わってきた」と話す。

 企画を考えた同園の高橋修園長(63)は「実際に速く回すなんて危険だからできない。しかし扇風機で強い風を当て、爆速の雰囲気だけでも感じてもらいたかった」と説明する。

 馬の首にはハンディ扇風機も取り付けられており、「風がもう少しほしい人にはこれを使ってもらっている」(高橋氏)そうだ。

 10日実施の企画第2弾は「エアーエアポート」。園内放送を全て空港や機内の放送を模して行った。

 同園は12月から3月まで雪などで閉園になるため、企画は11月最後の週末まで続けられる。

 一見、ばかばかしさ満載の企画にみえる。しかし、そこには、新型コロナで崖っぷちに立つ同園の生き残りへの強い思いと、同園を支えようとする人たちとの熱い絆がある。

 運転資金は確保

 同園は昭和51年、県内初の遊園地として開園。当時の名称は安田アイランドで、歴史は東京ディズニーランド(58年開園)より古い。山の裾野にあり、69ヘクタール(東京ドーム約15個分の広さ)に32のアトラクションがある。

 同園にとって、大型連休がある4月と5月は最大の稼ぎ時で、年間売り上げの約4割をそこで稼ぐ。ところが、新型コロナの影響で休園せざるを得ず、経営は崖っぷちに立たされた。

 5月末、生き残りをかけてクラウドファンディングを実施。目標額は年間運転資金の不足分である5千万円(うちアトラクション維持費は約3千万円)に設定した。7月末の期限までに集まった資金は約4200万円。加えて、同園に直接寄付したり、同園の支援専用口座に振り込まれたりしたお金が約1300万円あり、両者を足し合わせると約5500万円になった。今年度の運転資金はとりあえず確保できた。

 「新型コロナでみんな苦しい状況にあるのに、多くの方々が当園の存続に力を貸してくれた。新型コロナで暗い雰囲気が漂う中、みなさんに笑顔を届ける方法はないか。新たなアトラクションを導入する資金がない中で考え付いたのが、今回の『ぎりぎりアトラクション』だった」(高橋氏)

 企画名の「ぎりぎり」には「経費を使っていないぎりぎりのアトラクションだけど笑顔になってほしい。超ばかげた企画を笑ってほしいとの思いが込められている」(同)。

 同園の年間入場者数は十数万人。今年度はその半分程度に落ち込む見込みだ。新型コロナの先行きが見通せない中、試練は続くが、「来年の生き残り策はすでに頭の中にある」(同)という。

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