宇宙開発のボラティリティ

野口聡一氏の打ち上げ延期 ファルコン9の信頼性は失われたのか (2/2ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

「クルー・ドラゴン」の初号機

 スペースX社はファルコン9と並行して、宇宙船「ドラゴン」においてもNASAの信頼を勝ち取ってきました。

 ドラゴン宇宙船は2010年にテスト飛行に成功し、史上初の民間宇宙船となりました。2012年5月にはISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングに成功し、これまでに20機が無人補給機としてISSへ物資を輸送しています。

 その後、有人宇宙船に転用された「クルー・ドラゴン」は、2019年3月にISSへ向けてファルコン9で打ち上げられ、無人テスト飛行に成功。2020年8月に2名のクルーが搭乗してISSへ赴いたのは記憶に新しいところです。

 今回、野口聡一氏が搭乗する有人宇宙船「クルー・ドラゴン」は、すべてのテストが完了した後の運用第一号機で、無人補給機ドラゴンと同様、ファルコン9によって打ち上げられます。

 NASAによる有人宇宙機の打ち上げは現在、すべてケネディ宇宙センター(フロリダ州)で行われていますが、その3つある発射台のうちのひとつ「LC-39A」からは、かつてアポロ11号やスペースシャトルが打ち上げられました。NASAを象徴するその発射台は、2014年から20年間にわたってスペースXにリースされており、野口氏の搭乗機もここから打ち上げられる予定です。

待ったなしの過密スケジュール

 10月21日現在、ISSには3名のクルーが滞在しており、野口氏が搭乗するクルー・ドラゴンがISSへ到達すれば、計7名が滞在することになります。

 野口氏は約6ヵ月にわたってISSに滞在します。その間、11月23日には無人補給機ドラゴンがISSへ向けてファルコン9で打ち上げられ、続いて12月11日にはロシアの無人補給機「プログレス」がISSに送り込まれ、さらに2021年1月には、ボーイングが開発中の有人宇宙船「CST-100スターライナー」の無人テスト機がISSへドッキングするなど、多くのイベントが待ち受けています。

 また、2021年春には、野口氏の交代要員として星出彰彦氏が搭乗するクルー・ドラゴン2号機がファルコン9によって打ち上げられ、ISSへ赴く予定です。

 このように、長期計画によって連続的に運用されるISSにおいては、ひとつの不具合がその運用に重大な損失をもたらす可能性があり、それが人命にかかわるとすれば、なおさら慎重にならざるを得ません。ISSへの人員輸送をクルー・ドラゴンとソユーズだけに頼るいま、スペースX社とその機材は存在感を高め、より重要な責務を負っています。

 JAXAは、野口宇宙飛行士とクルー・ドラゴンの打ち上げに関する特別サイト(外部Webサイト)を公開しており、打ち上げの様子がライブ配信される予定です。

エイ出版社の現役編集長。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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