話は少し脱線するが、筆者の経験に照らすと、W大卒の就いている職業の幅は世間一般のイメージよりもかなり広く、サラリーマン比率は相対的に低い。収入もピンキリである。また、筆者のサラリーマン時代の後輩や部下にもW大卒は数多いるが、独立・起業して成功している者もいれば、本業(フリーの翻訳家や英語講師)では安定して食っていけず、工事現場の交通誘導員を生業としている者もいる。
詰まるところ、大学進学が頂点ではなく、高校卒業後から大学院卒までのどこで、どんな就職・就業をするのかが、人生最初の大勝負だということだ。
当てにならない、中学・高校の進路指導
大半の高校生にとっては、「やりたいことが分からないから、取り敢えず、なるべく上位の大学へ行きたい」のかもしれないが、大人がそれに手を拱いていてはいけない。仮に、本稿を読んでいる方が中・高校生の親だとして、例えば、ベストセラーとなった『13歳のハローワーク』や『13歳の進路』を題材に我が子と話ができるだろうか。
中・高校生には、好きなことを仕事にできる幸せ、やりたいことに挑戦し続けられる幸せを知ってほしい。そして、世の中にはどんな仕事があって、どのように社会の役に立っているのか、どんな人のためになっているのかを知ってほしい。
敢えて言えば、中・高校の進路指導は本来そのような文脈の上にあるべきものなのだが、「進路・進学に関しては学校の先生には期待していない(できない)」と話す公立生の保護者は多い。『13歳のハローワーク』や『13歳の進路』の内容を踏まえた進路指導ができる中・高校の教師は、いったいどこにいるのだろうか。
就きたい職業があったほうが進学先の選択肢は広がる
もちろん、職業を選ぶとなれば、この先数十年の社会的ニーズも重要である。駅前からの帰り道、暇そうな店が何件も見つかるような業種、今般のコロナ禍で閉店が相次ぐような業種はこの先も厳しい。軒数的に目立つと言えば、美容院、整骨院、不動産(仲介)、歯科医院…といったところだろうか。逆に、安心・安全、健康、環境、デジタルに関わる仕事は長く続けられそうだ。
例えば、医療・健康関連の国家資格職としては、看護師や管理栄養士、歯科衛生士といった身近な職種以外にも、保健師、救急救命士、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士…といった、比較的合格率の高い資格はたくさんある。福祉・保育関連でも、社会福祉士、介護福祉士、幼稚園教諭、保育士…など、同様である。そして、そういった資格の取得を目的にした学科を備えていて、入りやすい大学・専門学校もたくさんある。
一方、もし我が子が中学生で、「ロボットやドローンをやりたい」「EVの技術者になりたい」「プログラミングを極めたい」と言ってきたら、普通高校を経て大学受験をするよりも、中学卒業後は国公立高専に進むことも十分に選択肢になる(その後の大学3年次への編入も可能)。実際、筆者のサラリーマン時代にも何人かの高専卒の後輩がいたが、下手な(社外の)私立大学卒よりもIT系の仕事がデキる連中だった。
働き方改革の一環で、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行していく流れが出てきている中で、それと軌を一にしながら新卒一括採用から通年採用へウェイトが移っていくことも予測される。その際、若者世代の失業率(非正規雇用率)の上昇を伴うことも考えられる(欧州では既に顕著である)。
就職が確定する最後の最後まで、同じ土俵で戦わせ続けるのか、我が子に別の道筋を積極的に伝えていくのか。親も教師も、そろそろパラダイムを変えるべき時代ではないだろうか。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら