日本庭園の基本形が完成するまでに15年の歳月をかけた。社員旅行の際、全康氏が電車の窓から見た赤松を大変気に入り、旅行が「赤松探し」に変更されたというエピソードも残る。
赤松は現在約800本が植えられ、景観上重要な役割を果たしている。同美術館の武田航広報部長は「赤松を植えて手前と奥で濃さを変えて剪定(せんてい)することで、山と庭園が自然につながっているように見える」と説明する。
「来訪者が1人でも開館」
「一人でも訪れる人がいるのであれば開館させる」という全康氏の信念を引き継ぎ、同館は50年間、一度も休業をしたことがない。
この間、台風や地震などにも見舞われたが幸い致命的な被害はなく、一日も閉館することなく「無休」を貫いてきた。最大の危機は新型コロナウイルスの感染拡大だったが、徹底した安全対策を継続して実施することで何とか開館を続けることができたという。
半世紀で培った庭づくりのノウハウは引き継がれ、台風などで葉や枝が散ることがあっても開館時には一枚の葉も落ちていない完璧な庭園へと仕上げている。
武田部長は「50周年を迎えてもやることは同じ。来館していただいたお客さまに感動してもらえるよう、これからも徹底した維持管理を続けたい」と話している。