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「都民に寄り添い」コロナ対策 東京iCDC専門家ボード座長インタビュー

 東京都の新型コロナウイルス対策の司令塔と位置付けられる東京iCDC(東京感染症対策センター)の発足から1カ月が経過した。政策提言などを行う専門家ボードの座長で東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染症学)が産経新聞のインタビューに応じ、新型コロナ対策には都民の理解が不可欠との姿勢を強調。情報発信の工夫などを通じて「都民に寄り添う」と述べた。(大森貴弘、高久清史)

専門性を発揮

 --発足から1カ月が経過。どのような取り組みをしてきたか

 「チームごとに東京の抱えている課題について情報交換している。『検査・診断』ではインフルエンザとの同時流行に備えた検査体制について具体的に議論した。『感染症診療』では入院患者の年齢分布や、軽症・中等症・重症者の情報を共有し、重症化を防ぐための話し合いを始めている」

 「『疫学・公衆衛生』では第1波と第2波の異なる点、共通点などのデータを共有し、助言を始めている。『リスクコミュニケーション』では都民がどんな情報を希望しているかなどを知る目的でアンケートを行っており、都民に伝える内容や、どうしたらリアルタイムで受け取ってもらえるかを議論する。専門家ボードはそれぞれ専門性を発揮しており、プロセスが非常に充実していると感じている」

 --検査能力の拡充について提言したが、課題は

 「正確性を担保しないといけない。PCR検査以外の検査をどう組み込み、どう精度管理を行っていくのか。検査ひとつとっても、山積みの課題がある。検査体制を拡充する中でどのように課題を解決していくのか議論している」

情報解析すれば戦える

 --専門家ボードのチーム増は考えられるか

 「感染症対策は総合力。都に対して、少なくとも『感染制御』『微生物解析』『研究開発』『人材育成』の4つが必要だと提案している。地域と協力してインフェクションコントロール(感染制御)していくことを考えると、人材育成では都庁職員だけでなく、(地域関係者も対象にして)都民に感染症をしっかり理解していただかないといけない」

 --第1波を踏まえ、対応は変わってきたか

 「(今は)第1波に比べて、致死率が低い。診療のやり方に慣れてきていると思うので、各医療センターなどの情報を集めながら、第1波と第2波の違いについて解析を始めている」

 「前は未知の感染症で全く分からなかった。でも今まで得た情報を解析すれば戦える。すでに専門家ボードは多角的な目で解析を始めており、その結果を分かりやすく都民向けにレクチャーしていきたい。専門家ボードは都民と離れた存在ではなく都民に寄り添っていく。専門家ボード、都、メディアが一体となって都民にメッセージを伝え、理解していただければ、それが一番のワクチンになる」

インタビュー後日、11月19日の小池都知事臨時会見

【東京iCDC(東京感染症対策センター)】 都が新型コロナウイルス対策を強化するために10月1日に発足させた組織。政策提言などを行う専門家ボードも設置された。同ボードには感染リスクの分析・評価を行う「疫学・公衆衛生」▽症例分析などに基づく対策を検討する「感染症診療」▽検査・診断体制の充実に向けた「検査・診断」▽情報発信などに関する「リスクコミュニケーション」-のチームがある。さらにクラスター(感染者集団)対策を検討する「感染制御」▽ウイルスのタイプを分析する「微生物解析」▽検査方法に関する「研究開発」▽感染防止に取り組む都職員や地域関係者の知識を高める「人材育成」-の新設を検討している。

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