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茨城・利根町の多世代交流サロン 「年配の人から子供まで」実践の場の挑戦

 【それでも前へ】茨城県の南端を流れる利根川に面し、首都圏のベッドタウンとして発展してきた利根町。主に若い世代の人口流出で過疎化と高齢化が進む中、ニュータウンに住む主婦らが立ち上げた年配の人から子供まで多世代が交流するためのたまり場(サロン)が「そよかぜ」だ。

 「住み慣れたこの地域で、みんなが元気で楽しく暮らしていくにはどうしたらいいか考えた」と代表の荒木昭江さん(75)は設立の目的を語る。

 もともとは町診療所の医師が住んでいた住宅を借り受け、高齢者同士の食事会や、中学生までの子供には高齢者との交流を深めてもらうため無料でカレーライスを振る舞うといった、さまざまな取り組みやイベントを行ってきた。

 運営スタッフの中には社会福祉士、看護師、保健師といった資格の所持者もおり、高齢者の健康問題や、施設への入居の相談にも応じ、利用者は80人近くに達していた。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年2月末からは活動の中断を余儀なくされた。6月中旬に再開するまでの間、スタッフは「そよかぜ」に通っていた高齢者の体調を案じ、一人一人に返信用の封筒を入れたアンケート方式の調査票を発送。健康状態などの把握に努めた。

 感染防止のため、現在はプログラムを週1回のシルバーリハビリ体操と月2回のハンドベル教室、月1回の歌声広場に絞って実施している。体操は密を避けようとグループを2つに分けるといった制約もあるが、「久しぶりに集まってきた高齢者はうれしそうだった」とスタッフ。

 今後については「食事会はまだ難しいが、喫茶方式であれば会話をするときはマスクをして、コーヒーを飲むときには外すという形でなら可能かも。みんなが集える場を提供したい」と青写真を描く。

 今年9月末には、ニュータウン内にあったスーパーが閉店。「このままでは大勢の高齢者が“買い物難民”となってしまう」と危惧した荒木さんらは、約250人分の署名を集めて町へ新たなスーパーの誘致を求める要望書を提出。その後、県内を中心に展開する別のスーパーの進出が決まり、「ホッとした」とスタッフは胸をなでおろす。

 平成5年には2万1千人を超えた利根町の人口は現在1万5789人(11月1日現在)まで減少。人口に65歳以上の占める割合(高齢化率)も44・36%と、県内では県北の大子町に次いで2番目の高さだ。

 町は移住希望者に空き家を仲介。リフォーム代も一部補助するといった施策で若い世代の呼び込みに懸命だが、「私たちは今いる住民の持つ力や知識をもっと引き出し、みんなが年をとっても元気に暮らしていける町を目指したい」と荒木さん。「そよかぜ」をその実践の場としていく。(三浦馨)

 そよかぜ 平成9年に利根町で荒木昭江さんらボランティアが発足させた高齢者同士がふれあうためのサロン「陽だまりルーム」が前身。同23年に高齢者から小さな子供まで、多世代が集まり、交流できるたまり場として利根町布川の住宅を拠点に新たなスタートを切った。メンバーは原則ニュータウンの住民限定で受け入れており、手芸や小物づくりといった仲間同士の活動の場としても利用できる。

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