試乗スケッチ

新生日産が上げた狼煙「新型ノート」の進化に驚嘆した (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

随所に光る洗練された技術力

 新生日産を象徴するモデルが姿を現した。新しい日産のロゴをまとった、初めてのモデル「新型ノート」である。

 ノートとしては3代目だが平易なフルモデルチェンジとは意味合いが異なる。日産の浮沈はノートに委ねられている。それだけに、気合の入り方は驚くほどだった。

 外観は、新しい日産の電動モデルらしい意匠である。すでに公開されている次期EV車「アリア」の面影が色濃い。フロントマスクからボディシルエットに至るまで、アリアとの共通項が見出せる。

 パワーユニットは全てe-POWERである。ガソリンエンジンを搭載するものの、それは発電機としてしか機能しない。走りそのものは、ガソリンエンジンの発電でバッテリーに蓄えられた電力をエネルギーに、パワフルなモーターで駆動する。走りのスタイルはEV車なのである。

 それをはっきりと意識するのは、ガソリンエンジンの存在が抑えられていることからも想像できる。これまでのe-POWERは、それと知らされなければ一般的なガソリン車だと錯覚しそうなほどだった。加速ではほとんどの場面でエンジンが回り、速度の上昇に比例してエンジン音も高まったのだ。

 だが新型ノートは、エンジンの存在は希薄である。これまでのように積極的にバッテリー充電をしようとしないから、静かなEV走行時間が増えた。エンジンが始動しても、厚みを増した遮音材などの効果で、ノイズが耳に届くことはまれだ。荒れた路面を走行するような、ロードノイズが高い場面では積極的にエンジンを始動させて充電する。逆に、ロードノイズが低い安定した路面の走行では、エンジンの発電を控える。結果的にエンジンの存在が消えたかのように感じるのである。

 e-POWERの特徴だった「ワンペダル感覚」も抑えられた。アクセルオフで強烈な減速Gが立ち上がるから、まるで右足の踏み込み加減だけで加減速がコントロールできることからそれを「ワンペダル感覚」と呼んでいた。その減速感から唐突な印象が消えた。

 アクセルオフでも急激にストッピングパワーは立ち上がらず、しばらく間があってから徐々に減速Gが高まるのだ。その一連の所作に洗練された技術力が光る。制御の荒々しさが薄れ、上質になったのである。

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