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「予算の6%で成功」はやぶさ2のすごいコスパ 日本は宇宙大国になったのか? (1/3ページ)

 「ミッションを完全完遂できた」

 小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルが12月6日、6年ぶりに地球に帰ってきた。地球から遠く離れた小惑星まで飛行し、試料を採取して再び地球へ戻るという、難しい技を実現できたのは、今のところ世界でも日本の「はやぶさ」初号機と「はやぶさ2」だけだ。

 科学探査で世界のトップの地位を確保したかに見える日本だが、一方で「日本は宇宙先進国の地位から脱落しかねない」と危惧する見方も広がっている。日本の宇宙開発は進んでいるのか、それとも遅れているのか。

 「はやぶさ2」は2014年の打ち上げ後、順調に飛行を続け、小惑星「リュウグウ」に2回着地、人工クレーターも作り、砂や地中の物質を採取した。JAXA宇宙科学研究所の津田雄一・プロジェクトマネジャーは15日の記者会見で「計画を完全に完遂できた」と報告した。

 地球以外の天体から試料を持ち帰る「サンプルリターン」は、米欧中国など各国も取り組んでいる。NASA(米航空宇宙局)もこの10月、小惑星「ベンヌ」に探査機を着地させて試料を採取した。2023年に地球に戻ってくる予定だ。NASAと言えば、長年、日本が師と仰ぎ、お手本にしてきた組織。その大先輩を追い越し、2回も小惑星探査を成功させた。

 初号機の感動物語から10年

 「はやぶさ」と聞くと、10年前に地球に帰還した初号機を思い出す中高年世代も多いだろう。2003年に打ち上げられ、小惑星「イトカワ」に着地、試料を採取した。エンジンの故障、通信途絶などさまざまなトラブルが起き、満身創痍の状態になったが、予定より3年遅れの2010年にカプセルを地球に戻し、探査機自体は大気圏再突入の際に燃え尽きた。

 地球帰還が近づくにつれ、科学や宇宙に関心がなかった人まで巻き込む大ブームが起きた。トラブルでぼろぼろになりながらも宇宙を「1人」で旅する「はやぶさ」初号機の姿に、自分の人生を重ね合わせるサラリーマン、「はやぶさ君」と呼んで応援する人。仕事を終えて最後は燃え尽きたことも、感動を呼んだ。

 一方、「はやぶさ2」は、こうした「ドラマ」は乏しかった。というよりも、ドラマにしないことがチームの目標だった。初号機の失敗や経験を生かして技術や設計を磨き、運用訓練を重ねた。その努力が結実した。「はやぶさ2」を率いる津田氏は「100点満点で言えば1万点」と表現した。

 政府は「欧米に後れを取り始めている」と危機感

 あのNASAに後追いされたぐらいだから、「日本は宇宙大国になった」と言いたいところだが、宇宙開発全体に目を向けると、様相が違ってくる。

 今年6月に政府は、今後20年を見据えた10年間の宇宙政策「宇宙基本計画」を改訂した。政府が、どんな衛星やロケットをいつ頃打ち上げるかなどの政策を記載した文書だ。その中で今回、危機意識を強調した。例えば「宇宙産業のゲームチェンジが起こりつつある。我が国の宇宙機器産業はこの動きに遅れを取りつつある」「我が国の宇宙機器産業は(中略)欧米に遅れを取り始めている」「世界で技術革新が急速に進む中、我が国では将来のビジョンが十分に描けず、先進技術への挑戦も停滞している」……。

 今、世界の宇宙開発は変動期にある。中国、インドなどの宇宙新興国が台頭し、米国などの宇宙ベンチャー企業は価格破壊と呼ばれる安価なロケットや衛星作りに乗り出している。そんな情勢にもかかわらず、衛星やロケットを製造する日本の産業界は、世界の動きを先取りしたり、新しいことに挑戦したりする気持ちが薄い。その結果、遅れが目立ってきているというのだ。

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