試乗スケッチ

ホンダの“情熱と魂”が詰まった「シビック タイプR リミテッドエディション」 (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

コンマ1秒を削り取る精度

 それはまるでレーシングカーを開発するような手法で生み出された。ホンダの熱い魂「シビック・タイプR」の特別仕様車、国内限定200台のスペシャルモデルである。「リミテッドエディション」と名付けられ、話題をさらった。

 予約販売開始とともに即完売、すでに200台の持ち主は決定してしまった。それほどの人気モデルをドライブする機会に恵まれた。場所は、タイプRの鍛錬の場である鈴鹿サーキットである。

 シビック・タイプRには、驚くほど強力なパワーユニットが搭載されている。直列4気筒エンジンは、2リッターながらターボの力を借りることで最高出力320ps、最大トルク450Nmというパワーを炸裂させるのだ。だというのに、駆動はFF。もはやフロント駆動の限界への挑戦である。 

 実際に、世界一過酷とされるニュルブルクリンクサーキット(ドイツ)で、市販車FF最速タイムを記録、世界を驚かせたばかりである。今回の試乗に先立って挑んだ鈴鹿サーキットアタックでも、2分23秒9という好記録を樹立。圧倒的な速さを世界にアピールしているのである。

 そもそもホンダは、タイプRを特別なモデルとして大切に育ててきた。ミッドシップスポーツのNSXにタイプRを設定、それを皮切りに次々にタイプRシリーズが生み出された。といっても、ただバッチを貼っただけの安易な開発はしていない。世界最速を狙うのにふさわしいモデルのみに、タイプRが設定されるのだ。シビックやインテグラのタイプRは、ハイパワースポーツカーですら駆逐するほどのパフォーマンスを披露する。時には、プロドライバーでなければ持て余すほどの速さを備える。それでも躊躇(ちゅうちょ)することなく、徹底的に性能に磨きをかける。

 ちなみに、冒頭で報告した「まるでレーシングカーを開発するような手法」とは、たとえばタイヤの選定はドライグリップのみに特化したタイプであるし、鍛造のアルミホイールは1g単位まで軽量化させるばかりでなく、ホイールを適度にたわませることでタイヤを路面に吸い付かせるといった点だ。ホイールなどはたわんではならないものだと信じて疑わずにきたけれど、コンマ1秒を削り取る競争の世界ではそんな精度が求められるのだ。

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