ヘルスケア

コロナ禍で増加する高齢者のうつ病、早い気付きを 認知症と判別難しく

 新型コロナウイルス感染症の流行により交流が乏しくなることで、鬱病患者が増えている。特に、新型コロナ重症化のリスクが高いとされる65歳以上の高齢者では警戒して外出を控えているだけに一層心配だ。高齢者の鬱病は認知症との判別が難しく、発見や治療が遅れがちだが、早く気付くにはどうしたら良いのか。その特徴を専門家に聞いた。

 心身の不調同時に

 「若い人の鬱病では悲哀感や無気力、考えることのおっくうさが特徴的だが、高齢者は体の不調と心の症状が合わせて現れる場合が多い」。日本老年精神医学会評議員で国立長寿医療研究センター精神科の安野史彦部長は、そう解説する。

 体のあちこちが痛む、めまいや立ちくらみがある、食欲が落ちたり吐き気がしたりする、多量の汗をかく-などだ。同時に、不安やいらだちの感情が高まるなど精神的に不安定になる。「心身の症状が互いに強め合うことになる」と安野さん。

 高齢者では持病を抱えていることも多く、症状から鬱病を見つけることは難しい。特に、認知症状と見分けることは容易ではない。鬱病なのに見かけ上、認知症のような症状が出る「仮性認知症」が知られている。

 代表的な認知症であるアルツハイマー病と仮性認知症とでは、次のような症状の違いがある。

 一つは、物忘れに対する態度だ。認知症の診断ガイドラインによると、アルツハイマー病の患者は物忘れをしたこと自体を認めず、取り繕おうとする。一方、鬱病では忘れることが気になり、心配になる傾向がある。

 医師の問診に対してすぐに「分かりません」と回答を諦めてしまうのも典型的な仮性認知症の特徴だ。鬱病患者に共通する、考えるのがおっくうになる症状のためだ。

 発症の経緯にも違いが見られる。

 アルツハイマー病は症状がゆっくり目につきにくい形で進むのに対し、鬱病では、身近な人が亡くなったことなどによる喪失感や孤立をきっかけに、比較的短期間で悪化。ストレスなどの環境に影響を受けやすい。

 「こうした特徴に加えて、食欲不振や睡眠障害がないかなど、総合的に鬱病の診断につなげる」と安野さんは話す。

 進歩した治療薬

 患者の治療では、置かれた環境を改善する働き掛けと、症状を緩和する薬剤の処方の二つが治療の基本になる。孤立感を和らげるために家族や地域の見守り、デイサービスの利用などで人との関わりを増やし、周囲に患者を支えてもらう。

 治療薬も進歩した。以前の鬱病治療薬の多くは副作用が強く、高齢者に十分な量を処方できないことがあったが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの新しい薬は、比較的使いやすくなった。もちろん、SSRIにも食欲不振などの副作用はあるため、少ない量からの慎重な投与は必要だ。

 こうした治療を受ければ、回復が難しい認知症と違い、鬱病の症状は改善して心身の状態が元に戻る可能性がある。安野さんは「治療効果を高めるためにも、本人や家族が、心身の不調に早く気付くのが大切だ」と強調する。

 「『持病の薬をきちんと飲んでいるのに体調が悪くなった』など心当たりがあれば、普段の状態をよく知っているかかりつけ医に相談してほしい。身体症状の検査を受けるなどしても不調の原因が見当たらなければ鬱病が疑われる。精神科に紹介してもらうのがいい」。この手順なら精神科受診時に身体の状態が分かっており、診断、治療も早められるという。

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