宇宙開発のボラティリティ

2021年も宇宙が熱い その瞬間を見届けたい「歴史的イベント」 (2/2ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

▼3月20日

日本のデブリ除去衛星「ELSA-d」

《打上予定》

 3月には日本の民間企業によるデブリ除去衛星が、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地からソユーズ2.1aロケットによって打ち上げられる予定です。アストロ・スケール社(東京都墨田区)の「ELSA-d」は、世界初の民間企業によるデブリ除去衛星であり、今回打ち上げられる機体はその技術実証機(テスト機)です。

 デブリとは宇宙ゴミのことであり、10cm以上の大きさのものが2020年時点で約3万4000個、1cm未満のものまで含めると約1億3000個ものデブリが軌道上にあるとされています。

 このELSA-dでは、サービサーと呼ばれる親機(約175kg)から、クライアントと呼ばれる子機(約17kg)が軌道上でリリースされ、再度軌道上でドッキングするなどのテストが行われます。不規則に回転する子機に合わせて姿勢を変えながら再ドッキングしたり、故意に子機をロストさせてそれを追跡・捕捉するその技術は、過去に例がないほど高度なものと言えます。その複雑なミッションを解説した動画がYouTubeで公開されています。

【デブリ除去衛星「ELSA-d」】

▼3月29日

ボーイングによる宇宙船「CST-100スターライナー」

《無人テスト打上予定》

 ボーイング社が開発中の民間有人宇宙船「CST-100スターライナー」の無人テスト打ち上げが3月29日に予定されています。

 ISSへの人員輸送を目的とする当機は、2019年12月に第一回の無人テスト打ち上げが行われましたが、その際、打ち上げ自体は成功したものの、ソフトウェア設定に不具合によって燃料を使い過ぎたため、ISSとのドッキングは中止されました。そのリベンジとなるのがこのテスト打ち上げです。6月以降には初の有人テスト打ち上げが行われ、12月以降には初号機が打ち上げられる予定です。

▼3月30日

星出彰彦氏が搭乗する「クルー・ドラゴン 2号機」打ち上げ

▼4月

野口聡一氏が再び搭乗する「クルー・ドラゴン初号機」帰還

 昨年11月15日、野口聡一氏は史上初の民間有人宇宙船「クルー・ドラゴン」(Crew 1)に搭乗してISSへ赴きました。そして、多種多様な実験、超小型衛星の放出、ISSのメンテナンス作業などに従事していて、2月15日にはロシアの「プログレス」、2月20日には米国の「シグナス」など、無人補給機の受け入れが予定されています。

 3月29日には、先に紹介した宇宙船「CST-100スターライナー」の無人によるISSドッキング・テストに立ち会います。その翌日30日には、星出彰彦氏を含む4名のクルーがクルー・ドラゴン(Crew 2)に搭乗して打ち上げられ、野口氏のチームの交代要員としてISSに向かいますが、日本人宇宙飛行士2名がISSに同時に滞在するのは2010年以来、10年ぶりです。

 まだ日程は公表されていませんが、交代要員が到着して間もなく、野口氏のチームは宇宙船クルー・ドラゴン(Crew 1)に搭乗し、地球へ帰還する予定です。

エイ出版社の現役編集長。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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