ちいさなしあわせ おうちで楽しむ

(上)こじんまりと、にぎやかに豆皿が並ぶ「新しい食卓様式」

 「密」を避け、静かに明けた新たな年。旅行に行けない。帰省をあきらめた。初詣も自粛しよう。ウィズコロナの暮らしの中、できなくなったことが、たくさんありました。まだまだ続く巣ごもり生活。外に出かけないのなら、身近な家の中に目を向けてみませんか。(津川綾子、榊聡美)

 ひょうたん、鶴、結んだ水引…縁起ものをかたどった手のひらサイズの小さな皿が、食卓に並ぶ。盛られたのは、おせち料理の定番の酢ばす(れんこん)や、栗、芋きんとんに、常備菜のひじきの煮物など。黒豆はおちょこに、おからのサラダはそばちょこに収まって並ぶ。

 これらの料理をこしらえたのは、写真共有アプリ「インスタグラム」で人気を集める料理インスタグラマー、まめジャムさん(48)。昨年12月、東京都内の自宅を訪ねると、趣味で集めたという骨董(こっとう)の器やモダンな豆皿が数百点、アンティークの棚に収まっていた。

 「豆皿は気分に合わせていろいろと色や絵柄を組み合わせて楽しめるところが魅力」とまめジャムさん。 少しずつ買い足したという豆皿は、そばちょこや、雲、花、おたふくさんなど形や柄がユニークなものから、長方形や、水玉柄の丸皿など、およそ70枚。昨年春、新型コロナウイルス感染症が広がると、豆皿は食卓に登場する頻度が増えた。新しい生活様式の実践例で避けるようにとされた大皿盛りを、「できるだけ控えて、豆皿で別盛りをしようと心がけるようになった」という。

 昨年のまめジャムさん一家の食卓を振り返ると、サツマイモのたらこあえ、ピーマンとナスのみそ炒め、ポテトサラダや、カボチャの煮つけなどが豆皿に盛られていた。

 小さな器に盛られた数々のおかずから、家族がめいめい、好きなものを皿ごと取ると、感染リスクにつながる可能性があるという取り箸の共用も避けられる。

 「豆皿をのせた自分のプレートをテレビの前のリビングテーブルに運ぶのもあり。お行儀が悪いかもしれませんが、ソーシャルディスタンスです」

 今年の正月は実家への帰省をとりやめたため、恒例だった親族とのだんらんも、大勢で料理を囲むこともない。それでも、家族で過ごす食卓は、ひょうたんや菊の花など、おめでたい柄の豆皿が並び、にぎやかだ。料理を味わう家族だけでなく、インスタでその光景を見た親類、フォロワーの人々の、心が明るく、前向きになる1年となりますように-。豆皿が並ぶ食卓には、そんな思いも込められているのかもしれない。

■小さな器に大きな魅力

 「新型コロナ禍では、これまで以上に食事が楽しみな時間になっています。料理とともに器にこだわる人が増え、個性豊かな豆皿も注目されています」

 生活雑貨の通販サイト「アンジェ web shop」を運営する、セレクチュアー(東京)の広報担当、苅谷知美さんはこう話す。

 3、4年前、日常にある細かなことを大切にする「丁寧な暮らし」を営む人の間で、豆皿やそばちょこなど小さな和食器が人気に。いつものおかずも、豆皿にちょこんと盛って並べるだけで“映える”食卓になり、眺めるうちに心が満たされていくという。

 小さな器には大きな魅力が詰まっている。

 一般的な大きさの皿は柄ものを取り入れにくく、家族の数だけそろえないと、ちぐはぐな印象にもなる。豆皿なら大胆な絵柄や遊び心のあるモチーフを選ぶ冒険ができ、あえて異色のものを組み合わせた方が食卓にリズムも生まれる。

 何と言っても1枚1000円前後と値段が手頃で、「お気に入りの陶芸家の器は、まず豆皿から買うというファンが多い」。たくさん集めても収納に困らないのもいい。苅谷さんに、センスよく豆皿を使うポイントを聞くと、「目いっぱい盛らず、余白の部分も大事にして。大皿やざるに並べてのせると、すっきりとまとまります」。

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