喫煙者は、新型コロナウイルスに感染しやすく、重症化しやすいという。そこで今回は、喫煙と呼吸器感染症の罹患のしやすさ、および重症化リスクの関連について、日本禁煙学会、東京都医師会などの公表資料を基に紹介する。
グラフは、イスラエルの軍隊でインフルエンザが流行したときの発病率・重症化率を調べたもので、喫煙者と非喫煙者の兵士を比較している(ヘブライ大学他、1981年)。喫煙者は非喫煙者に比べて発症の割合が高く、重症化しやすいことが示されている。表は、喫煙本数とインフルエンザ罹患リスク、重症化リスクの比較(同大学他、1982年)だが、喫煙本数が増えるほど、罹患リスク、重症化リスクが増大することが分かる。
別のマウス実験では、たばこの煙を吸ったマウスは免疫物質を作り出す白血球数が、そうでないマウスと比較して3分の1に減少したとの報告(テキサス大学他、2011年)もある。これらの情報から、たばこの煙を吸うことで免疫力が減退するということは確かなようだ。
日本禁煙科学会の緊急意見表明(昨年4月)には、MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスでは、「喫煙者の罹患リスクは非喫煙者の3倍」と書かれている。新型コロナ感染症でも、喫煙者は非喫煙者と比べICU(集中治療室)入室リスクが2倍あること、特に中国・武漢の報告によると、「喫煙者は非喫煙者に比べ14倍も重症化しやすい」と記載されている。
同学会は、そのうえで、喫煙は免疫機能および肺機能を低下させ呼吸器感染症の最大の重症化要因であること、WHO(世界保健機関)が声明で新型コロナ感染症の重症化予防対策として禁煙を強く推奨していることも紹介し、禁煙を呼び掛けている。また、受動喫煙も呼吸器感染症の罹患リスクを高める要因であり、受動喫煙を完全に防ぐ方法は禁煙しかないことを指摘している。