終活の経済学

「おひとり様」時代の到来(3)いまある墓をどうするか

 「いまある墓をどうするか」。おひとり様にとっては、“自分の遺骨の行方”を考えるのと同じくらいの大問題だ。自分が死んでしまえば、いまある墓の管理者がいなくなってしまうことになる。打開策となるのが「墓じまい」、つまり、「いまの墓に眠っている遺骨の引っ越し」だ。

 全国石製品協同組合が2019年に実施したアンケートによると、墓じまいの理由として「承継者がいない」が最も多く、以下「お墓が遠い」「お墓の維持費が高い」「承継者はいるが、子供に迷惑をかけたくない」と続く。墓じまい後の遺骨をどうしたかという問いに対しては、承継者不要の「永代供養墓」という回答が最も多かった。

 遺骨の遺棄は犯罪

 おひとり様の墓じまいの場合、次の3パターンが想定される。

 (1)いまの墓を更地にして、永代供養墓(形状、管理方法などは多様)に引っ越す。

 (2)いまの墓を更地にして、親族など承継者のいる墓に移す。

 (3)いまの墓を更地にして、散骨してしまう。

 全てに共通するのは「いまの墓を更地にする」という作業、いわゆる「墓じまい」だ。墓じまいの手続きについて考えてみよう。

 まず、念頭に置かなくてはいけないのは「墓じまいとは、遺骨を捨ててしまうことを指すのではなく、遺骨の引っ越しである」という大原則だ。墓を更地にしたはいいものの、取り出した遺骨を勝手に捨てたり、放置したりすると、刑法の遺骨遺棄罪(190条)や廃棄物処理法違反などに問われかねない。

 墓じまいには手続きが必要だ。簡単に説明すると、「新しく遺骨を受け入れてくれる施設」「いまの墓がある霊園の管理者」「いまの霊園がある自治体」の3つの了解があって、墓を更地にすることができる。

 まず管理者に相談を

 最初にやるべきは、「墓じまいの後に遺骨を納める場所を探す」ことだ。

 心当たりがなくても、現在、墓がある寺や霊園の住職や管理者に聞いてみれば、アドバイスをもらえるはずだ。ある程度の規模を持った墓地や霊園であれば、承継者が途絶えることを懸念した人たちの受け皿として、同じ墓地や霊園内に、永代供養型の合葬墓や納骨堂を整備していることが多いからだ。そこに移すだけなら手続きも楽だ。

 例えば、東京都立霊園であれば、「既に都立霊園を利用の方が、墓じまいをする場合、『施設変更制度』を利用すれば同じ都立霊園内に遺骨を移すことができる」という。

 この制度を使って、園内の合葬埋蔵施設(永代供養墓の一種)に遺骨を引っ越しさせれば、承継者が途絶えてからも管理してもらえる。現在の墓所を更地にして返還するなどの条件を満たせば、新しい永代供養墓に入るに当たっての追加料金は不要だという。

 受け入れ施設は限られるが、都立霊園内に墓がない人の受付もされているし、本人による「生前申込」も可能だ。

 霊園内から霊園内へ移る「墓じまい」のために、「原状回復にかかる費用補助制度」を整備している自治体もある。

 千葉県市川市の市川市霊園では無縁化対策として「一般墓地返還促進事業」を行っている。おひとり様のように、承継者がいない人だけでなく、生活事情の変化により墓地管理が困難になった人も対象となる。

 使用許可後の墓地を返還した場合には、条件によっても異なるが納付した墓地使用料の半分、あるいは3分の1を返還。さらに改葬に当たり更地に戻すための費用として、例えば2.5平方メートルの普通墓地であれば21万円、芝生墓地であれば7万5000円を限度に助成する。

 公営の霊園のように手厚い助成はないが、同じ寺院の境内墓地で墓じまいをすれば、檀家(だんか)を離れることを理由に発生する「離檀料」は発生しないなどのメリットがある。

 「墓じまい」が終わったら 送骨、散骨…遺骨の行方は

 墓じまいして遺骨を取り出したものの、何柱もの先祖の遺骨は重く、新たな永代供養墓に移すにも体力的にきついと感じる人も少なくない。特に先祖の墓が遠方にある場合、移動にも大変な時間もかかる。

 【送骨】

 そんなときには、遺骨を郵送(ゆうパック)で送る「送骨サービス」がある。寺院の中には全国から郵送で遺骨を受け付け、永代供養(永代納骨)をしてくれるところがある。

 例えば、埼玉県毛呂山町にある「第二むさしの霊園」の永代供養墓「鑽仰陵」では、送骨による永代供養を3万円(1体につき)で受け付けている。送られた遺骨は合葬墓に納められ、供養されることになる。

 もし、他人の骨と一緒になるのが嫌ということであれば、40万円(環境保全料や納骨料は別途)で、個別区画された場所への納骨が可能だ。

 粉骨によって骨をパウダー状にし、遺骨の容積を減らせば1区画に10体分の遺骨を入れることができる。これなら、先祖の遺骨も集約して改葬できる。

 仏像の胎内に遺骨を収める「骨仏(こつぼとけ)」で、故人を供養している寺院もある。本寿院(東京都大田区)もその一つ。全国から送骨で遺骨を受け付けて、一部を本堂の仏像の胎内に、余骨は尊星王院(栃木県日光市)に納める。費用は3万円。3年間納骨堂で安置し、その後合祀する三密壇(5万円)、33年間納骨堂に安置後、合祀(ごうし)する浄光壇(20万円)もある。

 【散骨】

 近年増えているのが、遺骨をパウダー状にし、海に散骨する「海洋散骨」という方法だ。散骨自体は法律が想定していないグレーゾーンの追悼方法だけに、環境や周囲で暮らす人の感情に配慮したうえで行いたい。遺骨は全て海に散骨することもできるが、一部を散骨し余骨は永代供養墓などに納めることもできる。

 海洋散骨を行う会社によって異なるが、全国の海域に対応しているところもあり、「南国が好きだったので南の海に散骨」「生まれ育った故郷の海に散骨」といった弔い方もできる。

 船を1組で貸し切って散骨するプランのほか、複数の家族が合同で散骨をするタイプ、船酔いや高齢で乗船が不安な場合には、散骨を代行するプランもある。セレモニーが終わった後は、緯度や経度が示され、散骨した場所が分かる散骨証明書が発行されるのが一般的だ。

 最近ではハワイなど、海外の海に散骨をするプランを売りに出している業者もある。

 海ではなく「陸上」への散骨については、地域住民の反対や、それを受けた自治体の条例による規制によって、国内ではあまり行われていない。

 地域の理解を得たうえで実施されている数少ない陸上への散骨としては、島根県の隠岐・海士町にある無人島「カズラ島」で行われている散骨がある。大山隠岐国立公園内にあり、普段は上陸ができない島のため、散骨は年に2回だけ。費用は、遺族らが島を訪問して散骨する場合で26万5000円。「ゆうパック」による委託散骨(22万5000円)や、値段が割り引かれる「生前予約」もある。

 【自宅に保管】

 いまある墓から取り出した遺骨を、「自宅で供養する」という選択肢もある。自宅へ遺骨を置くこと自体はなんら違法ではない。

 ただ、墓じまい(改葬)に当たっては、新しく遺骨を受け入れることになる施設が発行する、「受入証明証」が必要。自治体によっては、この証明の提出がないと「改葬許可証」を発行してくれないところもある。まずは、自治体の担当者に、事情としっかりと説明する必要がありそうだ。

 (『終活読本ソナエ』2020年秋号から順次掲載)

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