大変革期のモビリティ業界を読む

モビリティ拠点に“転身”なるか 自動車ディーラーで高齢ドライバーの支援を (2/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 老後の「モビリティ」を考える

 インフラ側の道路も変えていく必要もある。ある高齢ドライバーは自分の好きなスーパーマーケットにクルマで買い物に行けなくなってしまった。運転スキルは決して低くはないのだが、スーパーの駐車場の入り口は交通量が多くクルマの流れも速いため、事故を起こす心配から家族から止められたのだ。近々免許を返納するそうだ。もし、地域ぐるみで高齢者がよく行くスーパーなど店周辺の道路の見直しをしていれば、その高齢ドライバーはもう少し長くカーライフを楽しめたかもしれない。

 運転者側の運転スキルを見直したり磨いたりしていく必要もある。高齢になるにつれて、反射神経や周囲の確認、ペダルを踏み込む力などが落ちてくる。自分の「運転癖」なども出来上がっていることだろう。それを自分自身で気づけるかというと気づけないのではないだろうか。毎年の健康診断のように、運転適性や運転スキルの毎年見直す機会はない。クルマの運転スキルは年齢で区切れるものでもないような気もする。

 事故を起こさず、できるだけ長くクルマを愛用してもらうために、運転スキルに応じた適切なクルマ選びを自動車ディーラーが提案してもよいだろう。自動車メーカーとしても、大事な顧客が事故を起こし、またそれがニュースに取り上げられる不本意なことであろう。

 クルマを長年購入してくれた顧客が免許を返納したからといって、それで縁が切れてしまうのはもったいない。これまでカーライフを一緒に考えてきたのに、クルマが売ることがなくなったからといって、クルマのない顧客の老後を一緒に考えないというのはどうなのか。

 クルマを乗る間の生活をデザインするだけではなく、ドライバーを卒業した後の暮らしや移動についても一緒にデザインしてほしい。そう切に願う。自動車ディーラーが、地域の「モビリティ拠点」として“転身”できれば、ビジネスチャンスはまだまだたくさんあるのではないだろうか。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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