新型コロナウイルスのワクチン接種に対応する自民党プロジェクトチーム(PT)座長の鴨下一郎元環境相は27日、産経新聞のインタビューに応じ、接種には全国の開業医に協力を求め、地域の診療所を活用するよう政府への提言に盛り込む考えを明らかにした。医師である鴨下氏は「できるだけ早く、一人でも多くの人が接種することが克服する手段となる。リスクのある高齢者にはぜひとも打ってもらいたい」と訴えた。インタビューの詳報は次の通り。(奥原慎平)
--ワクチン接種による副反応が懸念される
「確かにアレルギー反応や局所の痛みなどの副反応が出ることはある。しかし、接種が始まった英米の事例や医学文献をみても、決定的な副反応はない。新型コロナを予防する効果など、圧倒的に効能が勝る」
--人口の一定数以上が免疫を持てば、流行を防ぐことができる
「できれば8~9割の人に打ってもらいたいが、マンパワーや打ちたくない人のことを考えると、国民の半分がワクチンを打ち終わるのが完成形でしょう。高齢者や基礎疾患がある人など重症化のリスクを抱えている人は、自分のために打ってほしい。高齢者らに早くワクチンを届ける体制づくりを考えるべきだ。20代の若い人たちは接種に消極的な人も多いようだ。若い人は副反応が多いというデータもある。積極的にというよりは、自然体でいい」
--ワクチンは2回接種する必要がある
「医師の経験から、教科書的に『何が何でも2回接種』は難しい。ワクチンは1回打てばウイルスの抗体ができるというデータもある。2回打てばベストというくらいの緩い目標にした方が国民も安心ではないか」
--接種会場は学校や公民館を想定する自治体も多い
「高齢者施設の入所者や自由に歩けない人たちに会場まで来てもらうのは難しい。全国の医師会に協力を求め、地域の医師が訪問したり、近所の診療所を活用したりすればいい。会場に多人数が並べば、密ができてしまう。例えば、診療所で毎日10人ずつ打てれば圧倒的にスムーズでしょう」
--ワクチン輸送が難しい
「毎年、数千万人に打っているインフルエンザワクチンを接種するルートを使えばいい。薬の卸業者がノウハウを持っている」
--保管や搬送にはマイナス75度前後の超低温状態が必要という
「米製薬大手ファイザー社に確認したが、解凍後は5日間で打ち終わればいい。扱い方はインフルエンザのワクチンとほとんど変わらない。米モデルナ社や英アストラゼネカ社製のワクチンが供給されれば、超低温冷凍しなくてもいいので、ディープフリーザー(超低温冷凍庫)を拠点にしなくてもよくなる」
--厚生労働省は、ファイザー製の場合、超低温冷凍庫から出した後、原則3時間以内に冷蔵状態で接種する施設に運ぶよう求めている
「冷蔵状態で運べば5日間は大丈夫だ。少し誤解のある情報からスタートしていると思う」
--ワクチン接種が夏の東京五輪・パラリンピックの開催に与える影響は
「3月末から高齢者に打ち始めれば新型コロナに対する国民のマインドもガラッと変わるでしょう。ただ五輪開催のために接種を進めるとの考えではなく、五輪ができるような環境にどう持っていくかが大事だ」
--PTの意義は
「ワクチンは比較的安全で、専門家も自分の身を守るために有効だといっている。変異種にも効果がある。PTは、できるだけ多くの国民が自分の判断で打とうと思ってもらえるような発信を心がけたい」