未来への羅針盤

街中の寺社救え、関西で啓発へ 大阪・竹延

 自社育成職人が修復作業も

 伝統建築物の保存・修理に頭を悩ます寺社を救うため、大阪の老舗建築塗装会社、竹延(大阪市都島区)が立ち上がった。檀家(だんか)の減少で資金難に陥っている現状などを知ってもらうための啓発活動を今春にも始める。伝統建築物への理解を深めてもらい、保存・修復支援を醸成するのが狙いだ。自社グループで育成する職人の新たな活躍の場として事業化への期待も寄せる。

 檀家減少で資金難

 竹延は、子会社のKMユナイテッド(京都市左京区)を通じて「京都職人育成アカデミー」を2018年に立ち上げ、年1回約2カ月の期間をかけて10人ほどの若手職人を育成する。

 アカデミーでは、ベテラン職人による建築や塗装についての講義の後、しっくいなど壁を仕上げる左官、内壁などを塗る塗装、機密性を高めるシーリングといった技術をベテラン職人から手取り足取り学ぶ。ベトナムなど外国人も参加しており、卒業生は関西以外の地方の施工会社で活躍しているケースもあるという。

 アカデミーは昨年4月、育成活動の一環で妙心寺(同右京区)境内にある福寿院の修復作業に取り組む機会に恵まれた。戦火を免れた京都には、古い寺社が点在し、国指定文化財建造物や文化財の指定がない伝統建築物が多数残る。福寿院は、京都で圧倒的に多い文化財の指定がない伝統建築物の一つだった。

 国指定となれば、保存・修理は京都府が手掛ける。一方、文化財の指定がない伝統建築物の場合、寺社自身で保存・修復をしなければならない。しかし、街中にたたずむ小さな寺社では伝統建築物をほとんど修復しない。氏子や檀家の数が年々減り資金不足だからだ。

 たまたま福寿院は修復できたものの、「このままだと、日本人の心のよりどころとなる日本らしい原風景が失われてしまう」。竹延の竹延幸雄社長はそんな危機感を抱いた。

 CF通じ100万円目標

 竹延社長自身も修復作業を通して伝統建築物の危機的な状況を把握しただけに、「荒廃が進んでいることを多くの人に知ってほしい」と、まずは啓発活動に取り組むことを決めた。活動資金は、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」を通じて2月中旬から集める計画。100万円が目標だ。

 伝統建築物は高度な建築技術と材料に関する豊富な知識を持つ職人が必要とされるが、文化財の指定を受けていない場合、新しい左官や塗装の技術、工法を用いることができる。竹延社長は「ここならアカデミーの卒業生が活躍できる」といい、少子高齢化で指摘される職人不足もカバーする。

 伝統建築物の保存・修復の事業化は、職人の社会的地位の向上にもつながる。周囲の見方が変われば、次代を担う人材も獲得しやすくなるという。国土交通省などによると建設業の就業者は、55歳以上が30%を超える一方、29歳以下は約10%。高齢による引退を踏まえると、将来的に職人が減少するのは明らか。技術の継承も難しくなる。

 こうした業界事情も踏まえ、保存・修復が事業として軌道に乗ることに期待する。竹延社長は「伝統と現代の異なる工法の架け橋となり、地域や歴史遺産の活性化につながれば」とも話した。(松村信仁)

【会社概要】竹延

 ▽社長=竹延幸雄氏

 ▽本社=大阪市都島区都島北通1-2-12

 ▽創業=1950年4月1日

 ▽設立=1961年9月1日

 ▽資本金=1億円

 ▽年商=約35億円(2021年8月期予想)

 ▽従業員数=約250人

 ▽主な事業=外装・内装リニューアル工事、一般ペ イント塗装工事請負など

 ▽経営理念=世界に通用する新しい日本の建築文化 の規範となる価値観を創造し続けることで、“幸 せを感じる”モノづくりを実現する

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