新型コロナウイルス感染症の死者が国内で初めて確認されてから13日で1年。昨年11月ごろからの「第3波」の感染拡大に伴い、死者数の増加ペースが加速し、全国の累計では7千人に迫る。重症化リスクの高い高齢者ほど死者数が多く、家庭内感染や高齢者施設などでのクラスター(感染者集団)の発生を防ぐことが求められる。
厚生労働省によると、月別の死者数は、昨年2月5人▽3月51人▽4月359人▽5月477人▽6月81人▽7月37人▽8月285人▽9月275人▽10月195人▽11月373人▽12月1321人▽今年1月2261人▽2月1052人(11日時点)。昨年11月以降で7割を占めている。
累計の死者数が2千人増えるのにかかる日数も次第に短縮。2千人に達したのは11月24日で、最初の死者が出てから286日だったが、47日後の今年1月10日に4千人、24日後の今月3日には6千人を超えた。
性別では男性が女性の1・5倍で、海外の研究では免疫力の差が影響しているとされる。年代別の割合は90代以上23%、80代41%、70代24%、60代8%となっており、高齢者のリスクが際立つ一方、国内では10代以下で亡くなった人はいない。
都道府県別(11日時点)では東京1099人、大阪1037人、北海道630人、神奈川590人など大都市圏に集中している。
第1~3波を通して、感染者の増加に1~2週間遅れて重症者が増え、さらに遅れて死者が増大する傾向がみられる。第3波では緊急事態宣言の再発令により、感染者数は減少に転じたが、重症者数は1月26日の1043人まで増え続け、1日当たりの死者数は今月10日に121人と過去最多を更新した。
厚労省に助言する専門家組織は11日、重症者数や死者数が減少傾向にあるとしながら、「感染者数に占める60歳以上の割合が上昇しており、重症者や死者の減少が遅れる可能性がある」との評価を示した。
死亡率1・5%、80代以上は12・5%
厚生労働省によると、2月10日時点での新型コロナウイルスの感染者の死亡率は全体で1・5%。高齢になるほど数字は上昇し、70代は4・7%、80代以上は12・5%となっている。いまだに新型コロナ患者の治療に特効薬はなく、効果が確認された他の病気の治療薬などが転用されている。死亡率を低下させるためのカギは治療法の進展だ。
新型コロナの症状の段階は、(1)ウイルスが肺で活発に増殖する肺炎初期(2)さらにウイルスが増殖し息切れなどを起こす肺炎進行期(3)ウイルス増殖は収まるが免疫が過剰に働き人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)が必要となる過炎症期-の3つに大別される。
医療現場ではこうした症状に応じ、ウイルスの増殖を阻止する抗ウイルス薬と、過剰な炎症反応を抑える薬を組み合わせて治療している。国内で使用が認められているエボラ出血熱の治療薬レムデシビルは(1)~(2)、抗炎症のステロイド薬デキサメタゾンは(2)~(3)の治療で使われ、血栓の形成を防ぐヘパリンも広く用いられている。当初、重症者のみに使用していたレムデシビルは今年1月に肺炎患者全般に対象が拡大された。
新型コロナの治療法に詳しい愛知医科大の森島恒雄客員教授(感染症学)によると、これらに加え、最近は世界中で治験実施中の関節リウマチ薬アクテムラも、感染症を悪化させる「免疫の暴走」を抑える効果を見込んで併用されている。森島客員教授は「100点満点の特効薬はないが、症状に応じた薬の組み合わせにより、重篤化を食い止められる症例が増えてきている」と話す。
このほか、新型インフルエンザの治療薬アビガンが承認待ち。膵(すい)炎治療薬フサンなど多くの候補薬の臨床研究や治験も続いている。
新薬開発も進む。国内外で先行するのは、ウイルスを無毒化する効果が見込まれる抗体医薬品だ。
国内では武田薬品工業が国際プロジェクトで、回復者の血液から抗体を抽出、薬剤として精製しており、世界中で最終治験が進められている。