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外の酒盛り、ランチならOK? 誤解されるメッセージ

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令が続く中、屋外で酒盛りをする人の姿が今も各地でみられる。コロナ禍では「自宅なら会食OK」や「パチンコ店以外は安全」など、発信者の意図とは異なる意味で独り歩きしてしまう「メタメッセージ」と呼ばれる現象に注意が必要だ。注意喚起や自粛要請を自分本位に解釈すれば、不要なトラブルにもつながりかねない。専門家は発信者に対し、「丁寧かつ具体的に説明すべきだ」と指摘する。(鈴木俊輔)

 「昼食はみんなと一緒に食べてもリスクが低いということではない」

 今年1月、西村康稔経済再生担当相は改めてこう述べた。午後8時以降の不要不急の外出自粛要請に対し、一部で広がった「昼ならば問題ない」という誤解。政府の意図が十分に伝わっていないと判断したとみられる西村氏が、クギを刺した形だ。

 筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)は「メッセージが、発信者の意図と違う形で受け取られてしまうことは珍しくない」と話す。こうした現象は社会学用語で「メタメッセージ」と呼ばれ、言語以外の情報から発信が本来の意図を超えること、と定義される。発信者の表情や声のトーン、逆説的な解釈や裏の意図などの「行間」を読まれることで起きるとされる現象だ。

 さまざまな情報が飛び交うコロナ禍。未知のウイルスの脅威に対して流布する情報には、メタメッセージの危険性が潜んでいる。

 昨春の緊急事態宣言時は密接、密集、密閉を指す「3密」に対し、「3つそろわなければ大丈夫」という誤った認識が広がった。また、感染リスクの高さが指摘されたライブハウスやパチンコ店、飲食店などを避ける動きが出る一方、今も飲食店を避けて屋外や自宅で会食や酒盛りをする人がいる。だが、本来は「そうした場所以外は安全」という意味ではない。

 こうした現象はいずれも、本質からはかけ離れた解釈によるものだ。原田氏は「会食や外出は、誰もが本当は自粛したくない。だからこそ揚げ足を取るような解釈や、隙間を縫うような行動が起きる」と指摘する。

 医療体制の逼迫(ひっぱく)は解消のめどが立っておらず、自粛生活はまだ続く見通しだ。メッセージを発する側は、どんな点に注意すべきなのか。原田氏は「とってほしい行動を、具体的に伝える方が効果的だ」とし、「避けることや控えることを示すと、どうしても抜け道ができてしまう。黙って食事をする、テレワークをするなど、とるべき行動を具体的に示す方が伝わりやすい」と指摘した。

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