複雑な制御で旋回特性をコントロール
2020年モデルで驚かされるのは、そのエンジンパワーを制御する「Gベクタリングコントロール」と、走行風をコントロールする「アクティブエアシャッター」を協調制御したことである。
「アクティブエアシャッター」が開くと、走行風がラジエターに当たり冷却水の温度を下げるという効果を生むものの、その風はラジエターを通過し、車体のフロント下部に潜り込む。ボディフロントを上に持ち上げようという力が発生する。ボディがリフトするのだ。これがハンドリングを悪化させる。フロントタイヤへの荷重が不足し、曲がり辛くなってしまうのである。
これまではそれは野放しにされてきた。だが2020年モデルは、そのリフトのタイミングを見計らって「Gベクタリングコントロール」が制御する。より一層、「Gベクタリングコントロール」の効果を高めるというのである。
逆に「アクティブエアシャッター」が閉じれば、フロントのリフトが減り、フロントタイヤへの荷重が増す。そのタイミングでは「Gベクタリングコントロール」が制御を抑え、旋回しすぎる挙動を整えるのである。
というように、極めて複雑な制御をすることで、旋回特性をコントールするのである。
一見するところ穏やかなキャラクターのマツダ3ではあるが、見えないところで先進技術が盛り込まれているのだ。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。