ヘルスケア

「ささやかすぎる量」のワクチン、配分基準急ぐ

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種本格化を前に、発送する国と接種の実務を担う市町村の間で、都道府県が苦悩を深めている。どの市町村にどれだけのワクチンを振り分けるかの判断を委ねられているものの、国から発送される分量が極めて少ないためだ。埼玉県の場合、高齢者向け接種の初回到着は975回分となる予定で、対象者193万6千人の0・1%にも満たない。担当課は「ささやかすぎる量」(大野元裕知事)をどう配分するかの基準作りを急いでいる。

 ワクチンは、(1)医療従事者(2)65歳以上の人(3)基礎疾患のある人、高齢者施設などの従業員(4)その他の人-の順で接種することになっている。埼玉県では、医療従事者向けの優先接種が今月4日に始まっており、4月には高齢者向けに着手する見通しだ。

 ただ、分量から推測すると、65歳以上の高齢者向けワクチンが全ての市町村に行き渡るのは5月以降になりそうだ。

 県によると、高齢者向けワクチンは1箱に975回分が入った状態で届く。初回の発送(4月5~11日到着)で1箱、2回目(同12~18日到着)と3回目(同19~25日到着)でそれぞれ5箱が届く。合わせてもわずか1万725回分に過ぎない。

 医療関係者からワクチンの到着に期待が集まる一方で、県は限られた分量を63ある市町村にどう配分するのかに頭を悩ませている。米ファイザー製ワクチンは低温で保管する必要があるため、1箱を分けて複数の自治体に配ることが難しく、原則、1箱を1つの自治体で使い切る想定だ。

 県保健医療政策課によると、市町村から「どういう基準でワクチンの配布先を選ぶのか」という問い合わせが相次いでおり、3月中にも方針を策定する。人口や感染者数などに応じて優先順位をつけることなどを検討しているという。

 県内のある市長は「ある程度まとまった数が届くまでは、介護施設に入居している人などに接種対象を絞らざるを得ない。健康な高齢者への接種開始は5月以降になるだろう」との見通しを示す。

 県保健医療政策課の縄田敬子課長は「『なぜ早く打てないのか』という住民の疑問に正面から答えることができる基準を設けることが大切だ。多くの人が納得できる配布のやり方を早急に決めたい」と語った。(竹之内秀介)

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