【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスについて、パンデミック(世界的大流行)と表明してから11日で1年が経過した。感染力や致死率が強いとされる変異株が拡大しており、対応したワクチン開発などが急務となっている。
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、世界の累計感染者数は約1億1800万人で死者は約260万人。WHOによると、1週間当たりの新規感染者数はピークの1月上旬の500万人台から、2月8日以降は200万台が続く。
ただ、WHOの技術責任者のバンケルコフ氏は感染者に減少傾向がみられても「油断するときではない」と警告し、変異株拡大によって感染者数や死者数が再び増加する懸念があると強調している。
WHOによると、変異株は3月7日時点で、英国型が111カ国・地域、南アフリカ型が58カ国・地域、ブラジル型が32カ国・地域に拡大。英エクセター大などの研究チームは10日、英国型では従来型より死亡するリスクが最大で約2倍になる可能性があると発表した。
最も感染が広がる英国型の感染者は従来型を上回りつつある。欧米研究者らがつくる国際的なデータベース「GISAID」によると、欧米など世界12カ国で3月1日~7日に新規感染者約590人を調べた結果、約53%が英国型の感染者で、英国では約93%を占めた。イタリア国立衛生高等研究所のブルサフェッロ所長は2日、2月中旬の調査で英国型が新規感染者の54%で、同月上旬の18%から拡大したと明かした。
南ア型をめぐってはワクチンの有効性を低下させるとの警戒も強まっている。英メディアによると、米製薬大手ファイザーのワクチンは南ア型に対し防御効果が下がるとの実験結果が出ており、英製薬大手アストラゼネカ製も、南ア型の軽症者への効果は従来型に比べて限定的と判明した。
このためアストラゼネカは南ア型に対応するワクチンを今秋までに準備したいとの意向を表明。モデルナも南ア型の変異株に対抗するワクチンを開発、臨床試験(治験)を始めた。ファイザーなどは、通常より1回多い3回の接種で、既存のワクチンが変異株への有効性を高められるかどうかを調べる治験を開始した。
ただ、ウイルスは今後も変異を繰り返し、新たなワクチンが開発されても効果が低くなる可能性がある。そのため、モデルナのバンセル最高経営責任者(CEO)は「パンデミックが収束するまではワクチンの更新を続ける」と断言する。