観音開きのドアで車いす乗り降りしやすく
これまであまり気にしてこなかった自分を恥じた。ハンディキャップ車両が特殊だったことから、運転を代わってあげることができなかった。そもそも疲労を誘うドライビングを代行してあげることすら許されなかった。だがMX-30ならば、助手席でぐっすりと眠ってもらうことも可能になったのだ。これがセルフ・エンパワーメント・ドライビング・ビークルの本質のような気がした。
そもそも、観音開きが威力を発揮する。ハンディキャッパーが抱える困りごとを大別すると、「運転」と「クルマへの乗り込み」と、そして「車いすの積み込み」だという。「運転」は装置の変更で対応した。「クルマへの乗り込み」は、大きく開く観音扉で対応してくれる。車いすを車両に添わせることが可能になり、乗り降りがたやすくなったとされているのだ。
さらに、観音開きが有効なのは「車いすの積み込み」である。リアのドアが前方向に開くばかりか、電動式に改良されている。これによって、運転席に乗り込んだのちに、重く大きな車いすを助手席に積み込む必要がなくなかった。後席に載せることで対応できるのである。このメリットは無視できない。観音開きのMX-30ならではの魅力であろう。
MX-30であることの特徴をセルフ・エンパワーメント・ドライビング・ビークルとして昇華させている。来秋以降に市販化を予定。ますますMX-30の可能性の広がりを見たような気がした。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。