かつてなく大量の探査機が月を目指す
商業月輸送サービス「CLPS」とは?
2021年以降に月探査機が急激に増えることを冒頭で紹介しましたが、それをもたらす最大の要因がNASAの商業月輸送サービス「CLPS」(Commercial Lunar Payload Services)です。
アルテミス計画の一環としてNASAが展開するこのプロジェクトは、月への輸送手段となるロケット、宇宙船、探査機、着陸機、探査ローバーなどの宇宙機の提案・開発を、在米の民間企業に託すもので、2020年4月時点で14社がNASAと提携。先述した月着陸船の開発メーカー3社もここに含まれます。これら宇宙輸送機を活用して、NASAは月探査・開発を、多角的に、円滑に、低コストで進めようとしています。
当面は年に2度打ち上げられる予定ですが、すでに2021年から23年の輸送機と、そこに載せるペイロード(荷物)は、ほぼ固まっており、2021年の第一段はULA社のヴァルカン・ケンタウルス・ロケットによって、アストロボティック社の月着陸機が打ち上げられ、ここに探査・研究機器や技術実証機など、NASAの各部署が開発する11個のペイロードが搭載されます。
スペースシャトルの運用停止以降、NASAは宇宙開発事業における民間委託を進めてきましたが、地球周回軌道上だけでなく、月探査においてもそれが実行されたのがこのプロジェクトです。近年ではスペースX社がロケットの打ち上げコストを大幅に低減してきましたが、このCLPSによって、さらに月と宇宙が身近なものになるに違いありません。
日本のJAXAと民間企業も 2022年に打ち上げ予定
こうした月探査を目指す世界的な流れのなか、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)も2022年度に「SLIM」の打ち上げを予定しています。これは小型月着陸実証機とよばれ、月や惑星の探査で必要となるピンポイント着陸技術を小型探査機で実証するための探査機です。日本の新型ロケット「H3」によって、当初は2021年度中に打ち上げられる予定でしたが、相乗り機として開発されているX線天文衛星「XRISM」の開発が遅れているため、2022年度中の打ち上げに変更されました。
また、日本の民間企業ispacによる月面探査プロジェクト「HAKUTO-R」も予定されています。こちらは2022年のMission 1で月面着陸機を打ち上げ、さらに2023年のMission 2では、無人探査ローバーを着陸させる予定であり、これに成功すれば、月面に探査機を到達させた日本初の民間企業となります。
【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら