著者は語る

増田悦佐氏『資産形成も防衛もやはり金(GOLD)だ』

 経済アナリスト・文明評論家・増田悦佐氏

 今は資産の防衛を心掛けるべき時代

 世界中の実体経済が停滞しているにもかかわらず、株価だけがどんどん上がっています。注目度の高い米国株でいえば、とんでもない水準です。今、米国で一番怖いのは政治的な混乱。トランプ派対反トランプ派の街頭デモなどでの衝突はいまだにあちらこちらで頻発しており、内戦が起きかねないような状況です。こんな国内情勢で、金融市場は安泰と言い切れません。

 日本も平均株価は今年に入って3万円前後で推移しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引く中、こんなに株価が上がるほど景気がいいと思う人はあまりいないのではないでしょうか。異常事態です。日米ともいずれ大暴落があっても不思議ではありません。

 こんなとき、自分が築いた資産を守るためにはどうすべきか。金を現物で持つのが一番安全だろうと思い至り、この本を書いたのです。株式など金融投資が危ないなら不動産と考える人が多いでしょうが、それはどうでしょうか。特に東京の場合、五輪は延期され、かつ開催形式も当初とはだいぶ異なりそうで、需要の前提条件が変わってきています。

 なんといっても金は保存に優れています。腐ることもさびることもなく、永遠に輝きを放ちます。銀、銅、プラチナと違い、抜群です。もったいないのであまりしませんが、柔らかいので加工しやすいという物理的特性もあります。用途がいろいろあるということです。

 価格予測のしやすさも利点です。金価格は米国の実質金利と連動制が高く、一般論として、実質金利がマイナスのときは価格が上昇、逆に実質金利がプラスになると価格は下落に転じる可能性が高いといわれます。これを理解していると、価格が上下どちらの方向に動くかを予測しやすいのです。これらを踏まえると、資産の防衛を心掛けるべき時代に金は最適といえませんか。

 昔の話になりますが、大学、外資系証券会社以外にかつて米国に金鉱山を所有する日本企業で勤務した経験があります。実際に現地で金鉱山を見ています。「キラキラ光ってきれい」な金ですが、鉱山経営はいかに地味で泥臭いかということもよく分かっています。実体験に裏打ちされた知識があります。金について評論する他の人とは違うと自負しています。(900円+税、ワック)

【プロフィル】増田悦佐

 ますだ・えつすけ 一橋大大学院経済学研究科修了。米ジョンズ・ホプキンス大大学院で歴史学・経済学の修士号取得、博士課程単位取得退学。ニューヨーク州立大学助教授を経て帰国。HSBC証券、JPモルガンなどの外資系証券会社でアナリストを務めた後、ジパングでエコノミスト・アナリストを兼任した。71歳。東京都出身。著書に『日本人が知らない トランプ後の世界を本当に動かす人たち』(徳間書店)、『新型コロナウイルスは世界をどう変えたか』(ビジネス社)など。

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