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(4)血液で超早期がんリスク指摘、AIが遺伝情報に応じた治療提案も

 「あなたの膵臓(すいぞう)がん罹患(りかん)リスクは、健常者よりも高い値です」。昨年12月、東京都港区の医療機関。医師は冷静な声で血液検査の結果を告げた。「過度の心配は必要ありませんが、詳しい検査を受けることをお勧めします」

 東京医科大の落谷孝広教授らが研究を進める血液中のがん関連物質「エクソソーム」を活用したがんのリスク検査を受けた。少量の血液を採取し、1週間で結果が判明する。早期がんのリスクを指摘するのが狙いで、確定には精密検査が必要になるという。

 日本人の死因トップで国民病といわれるがん。3人に1人ががんで亡くなっており、いかに早くがんを見つけられるのかは医学界にとって長年の宿願である。

 落谷教授は国立がん研究センターに所属していたとき、血液1滴から超早期がんを発見するプロジェクトのリーダーを務めた。5年かけて国などから約80億円の研究資金が投じられた。

 着目したのは、細胞から血液中に分泌される「マイクロRNA」という物質。約2600種類あり、がん患者約6万人分を分析し、がんになると量や質に異常が出ることを突き止めた。

 胃、食道、肺、肝臓、大腸、前立腺、乳がんなど13種類のがんを「ステージ1~2」の初期段階で発見することが可能になるという。

 従来の腫瘍マーカーやコンピューター断層撮影(CT)画像、病理検査では、がんが進行しなければ発見できなかった。この検査はまだ実用化されていないが「マイクロRNA」を含む関連物質である「エクソソーム」による検査は既に始まっている。

 国立がん研究センターは人工知能(AI)を活用した「統合的ながん医療システム」の開発を進めている。血液検査やCT画像、遺伝子情報など異なる種類の結果データをAIでまとめて解析することを目指している。

 「特定の遺伝子を持つ患者にはこの薬が効く」など適切な治療法が見つかる可能性がある。検査、投薬、治療を個人の遺伝情報に応じて最適なものを選択できれば、薬の副作用といった身体への負担も減らすことができるだけでなく、医療費の削減にもつながる。

 同センター研究所の浜本隆二分野長は「未来の医療では、個々人の遺伝情報や体質などに合わせて、最適な治療を提供することができるようになる」と話した。

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