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村上春樹さん「小説抜きにして社会は健やかに進まない」 早大入学式で祝辞

 作家の村上春樹さん(72)が母校の早稲田大戸山キャンパス(東京都新宿区)で1日に行われた文化構想学部と文学部の入学式で登壇し、「小説は直接的には社会の役にはほとんど立たない。でも、『心』を語る小説という働きを抜きにして社会は健やかに前に進まない」などと祝辞を述べた。サプライズ登場した世界的な人気作家の肉声でのメッセージに約1400人の新入生が熱心に聞き入った。

 村上さんは昭和50年の第一文学部(当時)卒業生。芸術の振興に顕著な貢献をした校友に贈られる同大の芸術功労者表彰を受けるために出席した。黒い式服に身を包み、まずお祝いの言葉を述べた村上さんは「僕は在学中に結婚し仕事を始めて最後が卒業。普通と逆ですが、なんとかなるものです」と学生時代を回想。創作を志す新入生も多い両学部だけに「小説家は頭があんまりよくてもなれない。必要に応じて頭を使い、心で考える。秀才でも優等生でもないちょうどいい頃合いを見つけてください。松明のように受け継がれてきた小説を、大事にサポートしてくれる人がいたら僕としてはうれしい」などと語りかけた。スピーチを終えた村上さんが田中愛治総長から表彰状とメダルを授与されると会場は大きな拍手に包まれた。

 同大では10月1日、村上さんから寄贈された直筆原稿などの資料を活用した国際文学館「村上春樹ライブラリー(通称)」がオープンする予定。

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