宇宙開発のボラティリティ

網で捕ってモリで刺す? 最先端スペースデブリ除去プロジェクトの独創性 (3/3ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

ESAはロボットアームでデブリを補足

 スイスのスタートアップであるクリアスペース社とESA(欧州宇宙機関)が提携し、2025年に打ち上げが予定されているのが「クリアスペース1」です。このデブリ駆除衛星には4本のロボットアームが搭載されていて、それによってデブリを補足し、軌道から離脱させ、大気圏に再突入させます。

 2025年に打ち上げられるのはテスト機ですが、そのターゲットとなるデブリ(質量112kg)はすでに決定していて、その除去によって技術検証を行います。

【クリアスペース1】

スカパーはレーザーで撃ち落とす

 日本の民間企業としてはじめて放送用通信衛星を打ち上げた実績を持つスカパーJSATも、スペースデブリ除去衛星を開発していますが、そのシステムの最大の特徴は、レーザーを使用することにあります。

 打ち上げられるスペースデブリ除去衛星は、デブリに対してレーザーを照射します。照射された物体は、その表面がプラズマ化、または気化し、デブリ自体の表層からそれを構成する物質自体が放出されます。この「レーザーアブレーション」と呼ばれる物理現象による物質の放出が推力を発生し、その力がデブリの軌道を変更し、結果、デブリは大気圏内に落ちて燃焼、除去されます。

レーザーの開発には名古屋大学や九州大学が加わっており、2026年にこの事業を開始する予定であることを、スカパーJSATは公表しています。

 このシステムの最大の利点はふたつあり、ひとつはデブリに接触しないため機体の安全性が保てること、もうひとつはレーザー照射に必要な電力が太陽光パネルによって補えるため、重量がかさむ燃料を過分に搭載する必要なく、経済性が高いことにあります。

【スカパーJSATのデブリ除去衛星】

「抑制」から「除去」の時代へ

 長年の課題であったスペースデブリの除去は、さまざまな方法が試行されている最中であり、どのシステムが有効であるかは未知的です。しかし、国際法の規制によってデブリの増加を抑えることしかできなかった過去と違い、いま世界はデブリ除去に対して積極的なアプローチを開始しはじめているのです。

出版社の現役編集長。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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