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希少魚ムサシトミヨ、生息数が倍増 埼玉・元荒川

 埼玉県熊谷市の元荒川だけに生息するとされる希少魚「ムサシトミヨ」の今年の推定生息数は4754匹で、前回推計を行った5年前の2倍超に達したことが市などへの取材で分かった。一方、個体数調査の結果から生息域が縮小傾向にあることも判明し、市などは背景の分析を急いでいる。

 推定生息数は、市や県などでつくる「ムサシトミヨ保全推進協議会」が元荒川上流で今年2月に実施した個体数調査の結果から算出した。平成28年の前回調査に基づく推定生息数は2345匹だった。

 地元の保護団体などが、ムサシトミヨを捕食するアメリカザリガニの駆除や、すみかとなる水草の保護に取り組んでおり、市環境政策課の担当者はこれらの活動が生息数の増加につながったと分析している。

 今年の調査では、川の最上流では個体数の増加が確認された半面、別の場所には全く採捕できない地点も2カ所あり、市などは生息域が縮小したと判断した。前回調査で採捕できた地点1カ所では、湧き水が枯れてヘドロが流れ込み、採捕を断念せざるを得なかったという。

 市の担当者は「アメリカザリガニの駆除などを継続するとともに、調査によって得られたデータを分析し今後の保護に生かしたい」としている。(内田優作)

 ムサシトミヨ トゲウオ科の淡水魚。水温10~18度の冷たくてきれいな水を好み、寿命は約1年。背びれや腹びれなどに外敵から身を守るとげがある。かつては東京都や埼玉県の複数の場所で生息が確認されていた。元荒川では、開発で湧き水が枯れた高度成長期以降、くみ上げた地下水を川に流しているため、奇跡的に生き残っている。環境省は近い将来に野生で絶滅する恐れがあるとして絶滅危惧種に指定している。

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