ヘルスケア

コロナで後手にまわる結核患者数の把握 追跡調査などに遅れ、感染拡大懸念

 2020年に新たに結核と診断された患者の報告数が予想を大きく下回ったことが、結核予防会結核研究所(結核研)のまとめで分かった。患者自体が減ったわけではなく、新型コロナウイルス感染症の流行で健診受診者が減ったり、接触者追跡に手が回らなかったりして検査や報告が遅れた恐れがある。専門家は、感染拡大の懸念があるとして対策強化を訴えている。

 健診中止が影響大

 世界保健機関(WHO)は、1年間で新たに結核と診断される人が人口10万人当たりで10人以下を「低蔓延(まんえん)国」と定義している。日本は20年までにこれを達成して、低蔓延国の仲間入りをする目標を掲げていた。

 ただ、近年になって高齢の結核患者が減らないなど幾つかの理由が重なり、年ごとの減少幅は4~6%。目標達成は数年遅れというのが、大方の専門家の見方だった。

 しかし、コロナ禍で事態は一変する。結核研まとめの速報値で、新規患者数は19年1~10月の1万2128人に対し、20年同時期は1万380人、14%も減った。

 人口10万人当たりの推計は、低蔓延国相当の9.9人。20年の正確な人口を反映し、報告の修正、追加を見込むと若干の変動はあり得るが、予想を大幅に下回ることは間違いない。

 結核研臨床・疫学部の内村和広副部長によると、人との接触の減少やマスク着用の励行による感染減も含まれるとみられる。ただ内村さんは「健康診断の中止や延期の影響が大きい」と見る。

 月別で特に減ったのが4月と7月で、新型コロナの第1波、第2波と重なる。職場健診を受けた40代の患者は前年比42%減。10代の学校健診では85%も減った。

 結核と診断された人がいると、保健所は家庭や職場、学校などで濃厚接触者を調査。検査してもらって拡大を防ぐ。新型コロナにおける接触者追跡、クラスター対策と全く同じ方法だ。

 ただ、保健所による家族以外の接触者追跡で見つかった結核患者は、前年比61%減。コロナの接触者追跡に忙殺された様子がうかがえる。

 結核研による都道府県アンケートでは、濃厚接触者が健診を受けない例や、せきが出ているのに受診が遅れた例などが報告されている。

 世界でも同現象

 世界でもコロナの影響は大きい。結核は最近でも毎年約1000万人が発病、約150万人が亡くなる最大の感染症だ。

 2月、オンラインで開かれた国際結核セミナーでWHO西太平洋地域事務局の結核コーディネーター、タヒッド・イスラム博士は「医療資源が新型コロナに優先的に振り向けられ、結核の診断、検査や報告が遅れた」と指摘した。

 イスラム博士は「(日本を含む)西太平洋地域で20年上半期、患者報告数は予測より23%少なかった。25%減が半年続けば推計で8万1000人が余計に死亡し、結核死者数の水準を2000年代初頭まで後戻りさせる」と警告。新型コロナの経済への打撃も、住民の貧困化などを通じて結核の抑え込みに悪影響を招くと付け加えた。

 加藤誠也結核研所長は「人と人との接触が減ることによる感染減によって報告遅れが相殺されている可能性がある。日本では結核に既に感染している高齢者が多く、受診遅れは死者の増加につながりかねない」と話す。

 また、イスラム博士の指摘する経済悪化の影響にも同意し、「結核は“社会病”の側面があり、生活が不安定になると仕事を休めず、受診の余裕がなくなるなど感染が拡大しやすくなる」と注意を促した。

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