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ワクチン接種できぬ選手 東京五輪、消えぬ海外の不安

 【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスの影響で延期された東京五輪・パラリンピックの開幕まで14日で100日。海外では、五輪期間中の感染対策やワクチン接種への不安の声が上がっている。

 「選手たちは(五輪の)計画の変更に目を向けずに頑張っている」

 米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のスザンヌ・ライオンズ会長は7日、オンライン会見でこう語り、予定通りの開催に期待感を示した。

 一方で、ライオン氏は「私たちは現実的になる必要がある」とし、日本の新型コロナの感染状況を注意深く見守る考えを示した。

 日本国内で、新型コロナの新規感染者数が増加傾向にある中、各国のオリンピック委員会は、五輪開催期間中に選手らの感染が相次ぐ事態を警戒している。

 米外交誌ディプロマット(電子版)は3日、東京五輪の大会が「感染急増地(ホットスポット)になってしまう恐れがある」と懸念を示した。五輪の選手村では選手ら約6万人が交流するため、大会時の感染防止対策がどれだけ守られるかが不透明で、新たな変異株が発生する恐れも指摘されている。

 英国の棒高跳び選手、ホリー・ブラッドショーさんは英メディアに対し、東京五輪での感染リスクに「少しナーバスになっている」と打ち明けた。選手団は通常、一緒に行動することが多いため、感染の確立が高まるとの見方を示した。

 ブラッドショーさんら選手団は今年3月にポーランドで開催された大会に出場後、新型コロナの感染が確認された。同大会は比較的小規模だったことから、東京五輪はより感染が広がると懸念されている。

 感染を不安視する選手らの助けになるのが、ワクチン接種だが、全ての出場選手が完全な形で接種を受けられる保証はない。

 英メディアによると、大半の英国人選手は日本に向かう前に1回目の接種を受けられる見通しだが、2回目は難しい可能性がある。

 英オリンピック委員会(BOA)のヒュー・ロバートソン会長は今月、選手が出場前に2回の接種を受けられるよう英政府と協議する方針だ。ただ、英感染症の専門家は「高齢者や医療従事者らより選手が優先されることは考えづらい」と予測する。

 途上国の選手は1回目の接種さえ受けられない恐れもある。また、USOPCなどが接種を義務付けていないことから、宗教上の理由で接種を拒否する選手が出てくる可能性もあり、感染リスクを確実に解消するのは困難とみられている。

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