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岸和田だんじり祭に「3密」対策の壁 入魂式に批判も

 勇壮さで知られる大阪府岸和田市の「岸和田だんじり祭」の重要行事の一つ「入魂式」が今春、市内各地で行われ、密集する観客の様子がインターネット上に広がって波紋を呼んでいる。昨年、新型コロナウイルスの影響でだんじりの曳行(えいこう)を自粛した同祭。「今年こそ曳(ひ)きたい」と、運営団体は9、10月の本祭の開催を目指すが、どうしても人の密集を止められない課題が浮き彫りになった。(牛島要平、藤原由梨)

 動画が呼んだ波紋

 「密になっている」「止める人はいなかったのか」

 同市中之浜町が4月11日に行った入魂式の動画が投稿サイト「ユーチューブ」にアップされると、非難のコメントが次々書き込まれた。

 入魂式とは、新調もしくは大修理しただんじりを披露する重要行事。動画では、早朝、だんじりを町内から神社まで曳行する様子を千人を超える観客が見物する様子や、マスクをせずにだんじりを追いかけて走る人も映し出された。

 府内に蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用されていた時期。市観光課には多い時で1日50件近い抗議の電話が寄せられた。

 街を歩く市民からも不安の声が漏れた。会社員の女性(45)は「クラスター(感染者集団)が発生する可能性を考えなかったのか」。パートの女性(34)は「モラルが欠けているようで恥ずかしい」と話す。

 「自主運営」の限界

 一方、「昔から、だんじりのためなら死んでもいいという思いがある地域」(50代の会社員男性)と理解を示す声や「新調しただんじりを披露したい気持ちは分かる。今年こそはやりたいという気持ちはあるだろう」(40代の自営業男性)といった声もある。

 今年は曳行を復活させたいという思いもある。運営団体は1月、感染症対策協議会を設置。「全力 感染予防」と記したポスターを用意し、入魂式でも「密にならないように」と呼びかけたが、感染症対策は徹底できなかった。

 「若い者を抑えきれない」。中之浜町の関係者は悩ましげに語る。「マスクを着けても、曳行で走ると苦しくなって外してしまう。見物人が集まるのはどうしようもない」

 祭りは行政ではなく各町の自主運営で行われる点が特徴だ。そのため市は「だんじり祭の実施については、規制や指導を行う立場にはない」と説明する。岸和田保健所も「祭礼や神事について監督する部署がない」。道路使用許可を出す岸和田署は「公衆衛生上の規制権限は警察にはない」とする。結局、感染症対策の観点に基づいた曳行の中止などの決定はあくまで運営団体に委ねられる。

 4月27日、新型コロナウイルスの感染拡大で大阪府などに3度目の緊急事態宣言が発令され、同市並松(なんまつ)町と春木中町は5月2日に予定していた入魂式の延期を決めた。並松町はマスクを特注し、観客用にも2千枚用意。着用を続けるために休憩を増やすなどの対策も立てていただけに、関係者は悔しさをにじませるが「子供たちを守るためにも、曳行は無理」と話した。

 京都の祇園祭など日本の祭りに詳しい仏教大の八木透教授(民俗学)は「祭りは一度中止すれば技術やモチベーションの継承が難しくなるため、岸和田の住民が曳行を大切に思うのは理解できる。ただ、3密を指摘されるほど人を集めて実行する必要はなかった。祭りの本質を考え直し、神事を中心に置いた、感染者が出ない工夫が必要だ」と指摘している。

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