宇宙開発のボラティリティ

民間人の宇宙旅行が激増 「儲かる」宇宙ビジネスをめぐる米露の思惑 (3/3ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

 この観光用宇宙船ニューシェパードは、高度100km以上の「宇宙」には到達しますが、地球を周回する軌道には乗らず、数分間の無重力を体験したのち、弾道軌道によって降下するというものです。米テキサス州の専用射場から打ち上げられて10分後に地上に着陸します。

 今回は特別シートのためオークション方式とされていますが、通常フライトの場合の料金は20万ドル(約2200万円)と公表されています。

◇◇◇

 米国民間企業による宇宙サービスは、やがて火星旅行さえ実現させるでしょう。同様に、独自に宇宙ステーションを建設することを示唆するロシアや、すでにステーション建設を開始し、ロシアと月面基地を建設する中国も、地球周回軌道を超えたサービスを展開するはずです。

 こうした各国各社の思惑により宇宙が「利潤追求のためのマーケット」と化し、その結果、より多くの人々に宇宙が開放されつつあります。2021年は、その起源ともいえる記念すべき年として、歴史に刻まれるに違いありません。

《宇宙飛行参加者リスト》(2021年5月時点)

太字が民間人の「宇宙飛行参加者」

*は女性

▼「インスピレーション4」ミッション

  • 打上予定日/2021年9月15日
  • 運営/スペースX (米国)
  • 宇宙船/クルー・ドラゴン
  • 搭乗員/
    • ジャレッド・アイザックマン(船長/IT企業CEO)
    • ヘイリー・アルセノー(医師助手)*
    • クリス・センブロスキー(起業家)
    • シアン・プロクター(地球科学者)*

▼「MS-19」ミッション

  • 打上予定日/2021年10月5日
  • 企画/テレビ局「チャンネル1」(ロシア)
  • 運営/ロスコスモス(ロシア)
  • 宇宙船/ソユーズMS-19
  • 搭乗員/
    • アントン・シュカプレロフ(船長/ロスコスモス)
    • ユリア・ペレシルド(女優)*
    • クリム・シペンコ(映画監督)

▼「MS-20」ミッション

  • 打上予定日/2021年12月8日
  • 企画/スペース・アドヴェンチャーズ(米国)
  • 運営/ロスコスモス(ロシア)
  • 宇宙船/ソユーズMS-20
  • 搭乗員/
    • アレクサンダー・ミサーキン(船長/ロスコスモス)
    • 前澤友作(実業家)
    • 平野陽三(映像ディレクター)

  

▼「AX-1」ミッション

  • 打上予定日/2022年1月に4名
  • 企画/アクシオム・スペース社(米国)
  • 運営/スペースX(米国)
  • 宇宙船/クルー・ドラゴン
  • 搭乗員/
    • マイケル・ロペス・アレグリア(船長/アクシオム副社長)
    • ラリー・コナー(パイロット/投資家)
    • マーク・パティ(投資家)
    • イーサン・スティビ(投資家)

▼「AX-2」ミッション

  • 打上予定日/2022年11月
  • 企画/アクシオム・スペース社(米国)
  • 運営/スペースX(米国)
  • 宇宙船/クルー・ドラゴン
  • 搭乗員/
    • 未定(船長)
    • トム・クルーズ(俳優)
    • ダグ・リーマン(映画プロデューサー)
    • 民間人(未定)
宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus