ヘルスケア

「かかりつけ医」で接種できない 堺市、集団会場の増設も検討

 新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種、堺市は19日から個別接種を始まった。希望者は地元の医療機関や、かかりつけ医に予約する仕組みだ。かかりつけ医を持たない高齢者からは戸惑いの声も漏れるが、市側は「主治医のもとで安心してワクチン接種ができる」と個別接種のメリットを強調する。一方で、市は接種を迅速に進めるため、個別接種だけでなく、集団接種の会場の増設も検討し始めた。

 堺市では5月1日から集団接種会場での集団接種を先行して始めているが、接種の中心に据えるのが個別接種だ。地元の医療機関やかかりつけ医での接種は、接種を担う医師が対象者の体の状態や既往症をより詳しく理解できる利点があるためで、約23万人の高齢者のうち約6割に個別接種を受けてもらう予定になっている。市内約330カ所の医療機関で接種ができるという。

 だが、かかりつけ医を持たない市民もいる。また、普段通っている医院が接種できる医療機関とも限らない。堺市北区の女性(79)は、かかりつけ医が接種を行わないため、近くの接種可能な医療機関に問い合わせたところ、「受診歴がないので、予約は受け付けられない」と断られたという。「集団接種も電話がつながらず予約が取れなかった。接種ができない医院にかかっている人にとって不公平な仕組みではないか」と困惑する。

 個別接種を見送った医療機関側にも、「当面のワクチン供給量が少ないから」などの理由がある。「初めにワクチンの供給量も分からず、具体的な運用方法が見えなかった」と話すのは50代の男性医師。経営する医院では接種を行わない。高齢者向け接種に用いる米ファイザー製ワクチンは管理が難しいなどの課題もある。「うちをかかりつけ医にしている接種対象者は1千人を超えると想定される。日常の診療の支障になりかねなかった」と話す。

 個別接種に協力する医院にも心配はある。同市堺区の40代男性医師は「接種にかかわる事務作業も初めてのことばかり。慣れるまで診療と同時にはできない」と話し、診療時間外で接種を行う。堺市医師会は「医院ごとに事情や考えがあり、接種自体を行わなかったり、初診の人を受けなかったりする医院もある。ただ、そういったケースを補うために集団接種が行われる。希望者は必ず接種できる」と理解を求める。永藤英機市長は「予約が取れず、ワクチンを受けられない不安があるかもしれないが、国からワクチンは十分に供給される。焦らず慌てずに接種してほしい」と呼びかけている。

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