ヘルスケア

新型コロナワクチン接種の担い手確保へ各所全力 歯科医や研修医、離職看護師も

 新型コロナウイルスワクチンの集団接種が各地で本格化する中、接種の担い手となる医療従事者の確保が課題となっている。各自治体は、資格を持ちながら離職中の潜在看護師の掘り起こしに加え、歯科医師や医療従事者の「卵」に協力を求めるなどして環境整備を急ぐ。

 「接種後のマッサージは不要ですか」「接種者の腕は曲げた方がいいのでしょうか」

 14日、大阪府看護協会が大阪市城東区で開催した講習会で質問が飛び交った。参加した19人は全員が潜在看護師。接種の手順やアナフィラキシー(重いアレルギー反応)への処置方法などの説明を受けた後、人間の腕を模した装置を使い、注射器で練習を行った。

 「資格があるのにコロナ禍で何もできなかった自分にもどかしさがあった」と話すのは大阪府岸和田市の藤畠幸代さん(55)。医療現場から離れ17年になるが、「少しでもコロナ収束の手助けになれば」。

 結婚と出産を機に、4年前に総合病院を退職した茨木市の村田栄里佳さん(40)は「昔の感覚を思い出すことができた。常勤では働けないが、集団接種が始まったら協力したい」と意気込んだ。

 大阪府看護協会は3月から、潜在看護師向けの講習会を実施。すでに計約1100人以上が参加した。希望者は今後、各自治体の接種会場などに派遣される見込みだ。高橋弘枝会長は「府民がよりスムーズにワクチンを受けられるよう注力したい」と述べた。

 今月25日から大規模接種会場でのワクチン接種を始める神戸市は、市歯科医師会の協力を得て、1日あたり20人程度の歯科医を注射を打つ専門要員として派遣してもらう。

 会場で従事する医療スタッフは、問診と副反応など急変時対応の医師4人▽予診や接種補助、経過観察を担当する看護師86人▽接種を行う歯科医と看護師が計28人▽ワクチン希釈などの準備にあたる薬剤師と看護師計24人-で計142人。これ以外に、受け付けや会場整理などを担う事務スタッフ60人程度、2回目の予約を行うサポートの大学生ら40人程度を配置する。

 市ワクチン接種対策室は「人員や運用方法などは今後、さらに詰める必要がある。シミュレーションも行った上で、混乱なく運用できる体制を整えたい」としている。

 また、6月以降に大規模接種会場を設ける予定の大阪市も、大阪府歯科医師会に協力を要請している。

 一方、奈良県は6月から、県内の病院に勤務する研修医約200人を、市町村の集団接種会場へ派遣する。5人程度のチームを複数つくり、医師の指導の下で問診や接種に当たってもらう予定だ。

 県によると、都道府県が市町村の集団接種会場に研修医を派遣するのは全国初という。このほか、寝たきりの高齢者などの自宅に研修医のチームを派遣し、接種ができないかも検討している。

 若い世代もワクチン接種に協力している。

 「地元の看護学校として何もしないわけにはいかない。できる範囲で協力したい」と意気込むのは、相馬看護専門学校(福島県相馬市)の担当者だ。

 今月1日から延べ約20人の学生が、市内の集団接種会場で血圧測定に従事。15日以降は隣接する同県南相馬市の会場でも、接種を終えた人の経過観察や高齢の来場者の介助などに関わるという。

 4月に相馬市側から協力の依頼があり、2、3年生の一部に希望者を募ったところ、計25人が応じた。同校によると、学生からは「地域が大変な中、力になれることにやりがいを感じる」などと前向きな声が上がっている。紺野薫事務長は「医療従事者の卵である学生たちにとって、貴重な経験になるはず」と力を込めた。

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