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「2人目をつくらない理由?簡単さ」 中国少子化、その理由

 中国で最新の国勢調査が発表された。総人口は14億1178万人。少子高齢化が一段と進み、なかでも出生率1.3という数字が関係者を震撼(しんかん)させている。一人っ子政策緩和も数字低下に歯止めがかからない。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 この結果を受けて、中国のメディアは「若者たちはなぜ子供をつくらないのか」という特集を組んだ。垣間見られるのはまさに「中国の今」である。

 社会人8年目の某女性は半年前に2人目を生んだ。子供の面倒をみてもらうため、夫の両親と同居を決め、60平方メートルの賃貸住宅に計6人が生活することになった。日々の細かい摩擦とともに大きくのしかかる経済負担もあり、彼女は次第に心身ともにむしばまれていく。悩みの種は授乳だった。出勤後、午前に一度授乳で帰宅、すぐに帰社。遅れた分の仕事は昼休みにこなし、午後も再び授乳帰宅。すぐさま帰社-。この繰り返しのなか、ある日地下鉄で美しく装った若い女性を見かけたとき、突然彼女の頭の中にこんな思いがよぎる。

 「私はいったい何年新しい服を買わず、化粧もしなくなったのだろう」

 中国で専業主婦はセレブの証で、ほとんどの女性は定年まで働いている。彼女たちの収入は、それぞれの家庭において最大で5割を占め、住宅費と子供の教育費に費やされている。(「2021職場媽媽=母親=生存状態調査報告」)

 中国の学歴社会、教育熱の高さはよく知られているが、それは都会も地方も同じである。特に地方では、教育だけが人生を変える最強カードであるのは変わりない。

 「2人目をつくらない理由?簡単さ。教育にコストがかかりすぎるからだよ」(甘粛省蘭州市の37歳男性)。彼の子供はまだ5歳だが、課外授業8クラスを申請している。囲碁、レゴ、水泳などで、年6万元(約102万円)ほどかかる。

 「時代に置いていかれないように子供には機会を多く与えたい。ほかの子供が学んでいるのに、自分たちの子供に学ばせないというのは耐えられない」。家計への負担は大きく「2人目なんて不可能だ」という。

 西北部に住む某父親は子供の教育に月1000元の支出がある。しかし彼の月給は3000元ほどだ。湖南省の農村部で小学校教師をする某母親は、3歳にもならない子供に給料の3分の1を費やしているという。

 南海大学人口発展研究所の原新・教授は「子供の養育問題は、若者たちにより複雑な家計管理計画を促している」という見解を示す。(新華社電子版5月12日)

 「かつては子供が1人増えても、箸をもう1膳加えればいいだけだった。今はその箸が黄金の箸になってしまった」

 子供にお金と手間がかかりすぎる。この風潮に歯止めがかからない限り、中国の少子化は解決の目途がたたない。

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