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パイロットの隔離短縮が裏目に…新型コロナ対応高評価の台湾、市民も当局も緩む

 新型コロナウイルスを極めてうまく封じ込めていたように見えた台湾で、新規感染者が急増している。域内でコロナ検査をほとんど実施せず、ワクチン接種も進めていなかった台湾は、完璧な水際対策はないと改めて知ることになった。

 英国型の変異株流入

 世界的に優れたコロナ対策との評価を受けていた台湾では、コロナ禍がどこか遠い世界で起きているように感じられ、市民にも当局にも気の緩みがあった。

 今回の感染急拡大の引き金は、航空会社乗務員の隔離期間をわずか3日間に短縮するという先月の決定だった。従来の14日間では貨物便の運航が難しいとの事情もあった。

 感染していたパイロットから英国型の変異株が持ち込まれ、その後「ホステスバー」と呼ばれる接待を伴う飲食店を通じてさらに広がった。こうした店の従業員と客はいずれも関連を認めたがらず、おのずと濃厚接触者の追跡も難しくなる。

 台湾が19日発表した域内の新規コロナ感染者は267人。ここ数日の感染者は合計で1291人となった。世界的に見ればまだ少ないが、5月1日より前の累計感染者が1132人にとどまっていた台湾では驚くべき数字だ。

 台湾当局は19日、感染増を受けて制限措置を全域に拡大すると発表した。レクリエーション施設や娯楽ビジネスの休業、企業に対する在宅勤務の要請、人が集まる規模の制限に踏み切る。

 政府はこうした措置で厳しいロックダウン(都市封鎖)を回避したい考えだ。14日連続で報告される新規感染者数が平均100人以上となり、そのうち半数が感染経路不明となった場合は厳格なロックダウンが導入されることになっている。

 新北市の侯友宜市長は17日の記者会見で、「市中感染を制御できなければ、活動規制の強化を覚悟しなければならない」と指摘。「コロナ感染症をめぐる新たな警戒レベルは近い」と述べた。

 台湾でのコロナ感染急拡大の発端となった可能性が最も高いとされているのが、桃園国際空港に近いホテル「ノボテル」。半導体や電子部品を中心に台湾の輸出は旺盛な需要に支えられ、同空港は航空貨物の扱いが世界最多クラスだ。

 中華航空(チャイナエアライン)乗務員の隔離用施設としてノボテルの一角が使われていたが、近場で過ごす「ステイケーション」の割安プランで台湾の一般客も訪れていた。最近の感染者のうち30人余りが中華航空と同ホテルに関連していると台湾の疾病管制署はみているが、明確な感染経路の特定にはまだ至っていない。

 台湾が抱える重要な問題の一つをこの点が浮き彫りにしている。疾病管制署は昨年、コロナ検査の頻度を抑える戦略を取っていることについて何度か説明を余儀なくされた。大規模検査では偽陽性のリスクが高くなり、医療資源を浪費してしまうとの理由だった。

 早期の接種強化困難

 一方、世界的には積極的な検査が最善の方法とされ、世界の大半の国・地域では偽陰性による感染拡大がむしろ懸念されている。アワ・ワールド・イン・データによると、台湾のコロナ検査は今月16日時点で1000人当たり0.18回。オーストラリアは1.8回、シンガポールは13.1回だ。

 今回の新型コロナウイルスは無症状感染者の多さが大きな問題で、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)などに比べて封じ込めが難しい要因にもなっている。

 問題は台湾がどのように事態を正常化できるかだ。台湾ではワクチン接種率が低く、過去に感染したことがある人も少ない。今月17日時点で人口2350万人のうち、1回目の接種を受けたのはわずか0.9%。コロナによる脅威をそれほど強く感じてこなかった市民にワクチン接種を促すのも課題だが、調達の問題もあり、早期にワクチン接種を強化することは難しそうだ。

 台湾当局は濃厚接触者の追跡に加え、マスク着用など予防策をしっかりと受け入れる住民に望みをつないでおり、ワクチン供給が増えるまで何とか感染拡大を抑え込みたい考えだ。長期戦になる可能性もある。(ブルームバーグ Samson Ellis、Cindy Wang)

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