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地上に舞い降りたCA、テレビ番組に“進出” コロナ禍の減便などで

 新型コロナウイルス禍でフライトの減便や運休が長期化し、乗務の機会が少なくなった客室乗務員(キャビンアテンダント=CA)らが、テレビ番組に“進出”している。全国各地、津々浦々を飛び回ってきたCAならではの、各地のトピックスやグルメなどを紹介する取り組みだ。(兼松康)

 ケーブルテレビなどのJ:COMは4月から、日本航空(JAL)のCAがアシスタントとして出演する「中山秀征のつながるニッポン!フライト9」(毎日午後9時)の放送を開始した。MCの中山秀征が、週替りのCA1人とともに番組を進行する。

 JALでは昨年12月に、「JALふるさと応援隊」を設置するなど、地域活性化にまつわる取り組みを以前から進めてきた。「…応援隊」には、全国47都道府県ごとに、それぞれ出身地などゆかりのあるCAを配置して活動を展開。今年4月からは、「JAL ふるさとプロジェクト」を開始し、グループ社員が一丸となるチーム体制を構築し、幅広い活動を各地で展開している。

 少子高齢化の進展で、これまで以上に人の移動の減少が予想されることに加え、コロナ禍では、減便や運休などにより、CAが航空機で活躍する局面が激減した。そうした中で、「航空会社が社会に果たすべき役割の一つが政府目標でもある『地方創生』へのお手伝いであると考え、『ふるさと応援隊』を創設した」(同社広報部)という。

 番組へのCA出演も、同プロジェクトの一環で、取り組みの「強化例」として掲げられている「地域プロモーション」「観光資源の発掘」「地域産品の企画・拡大」につながる取り組みだ。番組では、地域の厳選トピックスのほか、「…応援隊」からのおすすめグルメなどを紹介する。コロナ禍で苦しむ全国の観光地の厳しい状況もあり、地域をつなげ、その活性化も図りたいという。

 全日本空輸(ANA)でも、日本テレビとANAグループの共同プロジェクトとして、CS放送の「日テレNEWS24」に、4月から5人のANAグループ社員がキャスターとして出演しており、テレビ番組への“進出”がここでも実現している形だ。

 「…フライト9」に出演する中山は、「コロナになってから、テレビ業界のフットワークが重くなった」と指摘。ロケの状況についても、「人と接触しての番組づくりが多かったのに、それができなくなった」と嘆く。

 ただ、自身はコロナ禍で東京都内を歩いて、よく街を見るようになったといい、「路地に入って、こんなところに釣り堀があったんだとか、知り尽くしているつもりの都内でも、意外に知らない場所が多かった」と打ち明ける。

 「お祭りなんかもそう。その地域だけでしか知られていないようなもの、その土地の人には当たり前だとしても、僕らが見ると『へえ』となるものはたくさんある。(地上波の)民放だとなかなかそこまで細部にまで行けないけれど、地域密着のJ:COMなら」と期待する。

 自身は以前、静岡で「ネットにも載っていない地方のラーメン屋に飛び込みで入って、めちゃくちゃうまかった経験がある」といい、「足で稼ぐ魅力はあるはず。この番組発で、全国区になる商品があるかもしれない」とも話す。

 番組をともに盛り上げるCAについては、「全国を飛び回っていろんなことを知り尽くしている。そのCAさんがいろんな情報を持ってきてくれる。知らないことを知れる喜びを楽しみたい」とする。

 番組に登場するCAの一人で、茨城県の「ふるさと応援隊」でもある秋永七穂さんは、「ネットによる検索などで観光情報は飽和状態かもしれませんが、番組を見てもらうことで、ネットだけでは知り得ないことを発掘できるかも」と力を込める。地上に舞い降りたCAらの、番組を通じて地域活性化に貢献する姿が、連日見られそうだ。

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 「…フライト9」は、J:COMの無料放送「J:テレ」で放送するほか、地域情報アプリ「ど・ろーかる」でも配信される。

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