ヘルスケア

コロナワクチン、和歌山が接種快走 日本一充実の診療所との連携奏功

 全国で着々と進む高齢者向けの新型コロナウイルスワクチン接種。国などの集計によると、都道府県別の接種率(1回目、5月23日時点)で首位を快走するのが和歌山(17・47%)だ。人口10万人当たりの数が全国最多を誇る診療所を軸にした接種計画が奏功。高齢者が全県の3割を占める和歌山市では、年明けの1月下旬から準備に取り掛かり、“スタートダッシュ”を成功させた。(西家尚彦)

 280診療所が協力

 和歌山県の接種率は5月23日時点で、全国平均(6・10%)を大きく上回り、隣接する大阪(4・58%)、奈良(5・17%)も引き離している。

 順調な接種の原動力となっているのは、県内の高齢者約30万9千人のうち、3割強の約11万6千人を占める和歌山市。県の担当者も「高齢者の多い和歌山市の順調な接種が日本一に結び付いている」と認める。

 最大の強みは診療所の数だ。人口10万人当たりで見ると、全国平均81・3(令和元年)に対し、和歌山県は110・8と47都道府県でトップ。和歌山市は118・8とさらに高い。

 背景について、県内の医療関係者は「親元の病院を継いだり地域で開業したりするケースが多く、地元志向が強いことも診療所が充実している理由では」と推測する。

 和歌山市はワクチン接種に際し、そうした地元に密着した診療所との連携を重視。尾花正啓市長は1月下旬、「新型コロナワクチン接種調整課」を設置し、高齢者への接種スケジュールを練り始めた。2月下旬には市医師会の関係者らに協力を要請。約430の診療所のうち、最終的に6割強の約280が応じた。

 多くの診療所から協力を取り付けたことに、市の担当者は「日頃から高齢者宅への訪問診療をお願いするなど、長年良好な関係を築いてきた」と胸を張る。

 双方にメリット

 市内の診療所「星野クリニック」では、診療室の隣にある処置室に5台のチェアを設置。接種を終えた高齢者が経過観察したり、休憩したりしてもらえるようにした。ゴールデンウイーク以降は休診日なども活用し、1日約120人以上に接種する日もある。

 星野好則院長(41)は「なじみの診療所だと高齢者も電話で予約が取りやすい。医師もアレルギーなど患者個別の基礎疾患を把握しているので、安心して対応できる」とメリットを強調。「市が地域の実情を見越し、診療所を軸とする接種計画を早期に決めたのは大正解だった」と話す。

 接種を終えた市内の女性(70)は「副作用が不安だったが、気心の知れた先生から安全性を説明してもらい、不安が取り除けた。早く済んでほっとしている」と笑顔をみせた。

 集団接種会場も

 最前線で接種を担う診療所の医師らを、市も惜しみなくサポートする。担当者と頻繁に連絡を取り合い、予約状況を詳細に把握。診療所からの依頼に応じ、接種に使う注射器や希釈水の必要分を袋詰めして配送している。市医師会長を務める「野村内科医院」の野村康晴院長(61)は「市のきめ細やかな後方支援は心強い」と評価する。

 市はさらに接種を加速させるべく、近く次の一手を繰り出す。6月12日~7月11日には大型商業施設「イオンモール和歌山」など3カ所に集団接種会場を設ける予定だ。

 尾花市長は「診療所の献身的な協力で、7月中旬には高齢者への2回目の接種も完了する見込み。かかりつけ医のいない高齢者のために集団接種を実施し、きめ細やかな対応を継続したい」と話している。

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